第21回大佛(おさらぎ)次郎論壇賞(朝日新聞社主催)は、シンガポール国立大学准教授の益田肇(はじむ)さん(46)の『人びとのなかの冷戦世界 想像が現実となるとき』(岩波書店)に決まった。無名の人々の日常の営みと想像の連鎖が「冷戦」という新たな現実を生み出した過程を分析し、第2次世界大戦後の歴史に新たな光を当てた。来年1月28日、東京都内で朝日賞、大佛次郎賞、朝日スポーツ賞とともに贈呈式がある。 ■小さな行為の連鎖が生んだ枠組み 冷戦とは何だったのか。現代史研究における大きな問いに取り組んだ。大国間のせめぎ合いや政治指導者の駆け引きの物語ではなく、膨大な資料から草の根の人々の実感を積み重ねることで、冷戦初期の歴史を描き直した意欲作だ。 外交史に社会史を重ね合わせて見えてきた新たな歴史像は説得力がある。第2次世界大戦後の社会変動のただ中にいた欧米や東アジアの人々は、1950年の朝鮮戦争勃発に第