001 夢を見る。 ──火を点けろ。燃え残った全てに。 夢を見る。 ──コーラルを焼けば、俺たちの仕事は終わる。 夢を見る。 ──お前の稼いだ金だ……再手術をして……普通の人生を……。 夢を見る。 ──友人たちの……遺志を……! 夢を、見る。 ──お前にも……友人ができた……。 夢を、見た。 そうして、ぐらり、と剥がれ落ちるように夢が欠けていく。 がらがらと崩れ落ちる現像を見て、そこでようやくのこと、自分自身がどうなっているか──俺は把握した。 ああ。 燃えている。 燃え殻に火はついたが、燃え残った全ては健在であり。 火種(ザイレム)は役割を果たさぬまま、ルビコンの海へと落下していく。 コーラルは──燃えなかった。 「……621」 掠れた意識のまま呟く。 落下軌道に入ったザイレムごと大気圏によって焼けているだろう己の肉体は、しかし、その呟きだけは可能だったらしい。 とっくに事切れたものだと