29日に没後10年を迎える作家、山崎豊子(1924~2013年)。人情ものや社会派小説など作品の魅力は色あせない。この10年の間にも『白い巨塔』が初めて漫画化され、困難とみられていた『沈まぬ太陽』のテレビドラマ化が実現した。 なぜ山崎作品は今なお繰り返しメディア化されるのか。作り手たちに理由を聞くと、リアリティーへのこだわりも見えてきた。 <Zのメスを持つ男> 印象的なタイトルで幕を開けるのは、18~21年に『月刊コミックバンチ』(新潮社)で連載された安藤慈朗さんの漫画「白い巨塔」だ。<これは医療が神への祈りであることを忘れ 現代の「白い巨塔」に挑み その野望に敗れた男たちの物語である――>。冒頭、そうつづられる。 原作は正編が65年、続編が69年に刊行された山崎の同名小説。60年代初めの大阪の大学病院を舞台に、野心的な外科医・財前五郎と、彼の同窓で出世に無関心な内科医・里見脩二の対照的な