原田氏は2015年から20年まで日銀審議委員を務めた。当時の日記を基に書いたこの本で、原田氏は、日銀という組織と同僚たちの赤裸々な実態を、これでもか、というほど暴露している。たとえば、次のようだ。 〈そもそも、5000人の日銀職員で金融政策の専門家は何人いるのだろうか。金融政策の専門家とは、金融政策が金融市場と経済全体にどのような影響を与えるか、を理論的・数量的に認識している人だろう。ところが、そんなことを知っている人は、日銀内にほとんどいなかった〉 〈2015年の時点では、金融政策決定に関わる少なからぬ人々が、物価は金融政策では決まらない、潜在成長率で決まる、経済の実力で決まる、物価は基礎体温のようなもので、個人差がある、などと議論していた。物価と金融政策との関係を認めていなかったのだ〉 〈岩田副総裁は「物価が経済の実力、潜在成長力で決まるとして、金融政策で潜在成長率を動かすことはできな