10年前の2011年3月11日、午後2時46分18.1秒。この瞬間を境に、多くの人生はそれ「以前」と「以後」に決定的に分断されました。被災者でないわたしでさえ、めまいのような横揺れに驚いたあの瞬間からの数日、数週間、そして1年は忘れられません。 東日本大震災の後、地震や津波への防災対策、またとりわけ原発の在り方について多くの意見や議論があり、出版物も数々刊行されてきました。災害から教訓を引き出すことは大切ですが、もっとも忘れてならないのは、あの時あの場にいた人たちの思いであり、痛みです。 「孤塁 双葉郡消防士たちの3・11」(吉田千亜、岩波書店)は、歴史に埋もれそうになっていた地元消防士たちの姿を記録した仕事です。講談社・本田靖春ノンフィクション賞を受賞。文学賞のような話題にならないのは、仕方ないけどやや寂しいかな。 双葉消防本部は福島県双葉町、浪江町、大熊町など6町2村の自治体が共同で運