震災から13年経ち、福島の復興は進んだ。無論、全てが元に戻ることなど有り得ず課題も山積するが、事故直後の被災地を目の当たりにした身にすれば、あの頃に感じた絶望からは程遠い未来の姿だった。復興に関わった全ての尽力に、改めて心からの感謝と敬意を表する。 その一方、地元では今でも「風評・偏見差別」が強く問題視されている。行政は対策の主軸を「正確な情報発信」にしてきたが、効果は不透明だ。現に、昨年海洋放出が本格化したALPS処理水を未だ「汚染水」と呼び続ける勢力は少なくない。これまでの「風評対策」は有効だったのか。 2022年、独立系シンクタンクアジア・パシフィック・イニシアティブ(API)事故調報告書は、行政の対策を「風評被害の概念が曖昧」「有効性への視点が不足」「(正確な情報発信方針は)真っ当な態度のように見えるが、実際には風評と正面から向き合うこと、差別や偏見を持ちその解消を阻害しようとする