インドでは胎児の性別が女性だとわかると、いまだに中絶されることが珍しくない。ある村で村長をしていた男性は、自分の娘の誕生をきっかけに、女性の権利を推進する活動家へと生まれ変わる。彼の打ち出すキャンペーンは、インド社会に着実な変化をもたらしているようだ。 分娩室から出てきた看護師の表情が険しくなった。毛布にくるまれた赤ん坊を抱えて近づいてきた彼女は、まるでそれを言うことが恥であるかのように、声を潜めて家族に言った。「女の子です」と。 看護師の否定的な態度に、新生児の父親スニル・ジャグランはまったく驚かなかった。インド北部のハリヤナ州で育ったジャグランは、娘よりも息子のほうがはるかに好まれる状況に慣れていた。 だが、看護師に感謝のしるしとしてお金を渡したのに、「男の子を取り上げられなかったから」という理由で受け取ってもらえなかったとき、彼のなかで何かが「切れた」。 「ご自身のことも、恥だと思う