緒方貞子・元国連難民高等弁務官が10月29日に他界した。 その後、数多くの人々が追悼の文章を書いているのを見た。全体的に、緒方氏の業績を、「難民に寄り添う」という視点からのみ書いたものが多いのが気になっている。 もちろんそうした描写は偽りではないのだが、緒方氏と言えば「難民に寄り添う」ということだけ、ということでいいのか。そう思って、私自身も、少し個人的な思いをつづった。 その内容は、緒方氏の足跡は、現代世界で人道援助活動家が直面している困難にも思いを寄せながら、思い出すべきではないか、ということだった。さらに言いたいのは、緒方氏は、国際政治の激流の中で仕事をしていた、ということである。 そこであらためて、もともとは国際政治学者であった緒方氏が、国際政治の激流の中で、どのように国連難民高等弁務官としての職務を全うしていったのかについて、少し書いてみたい。