並び順

ブックマーク数

期間指定

  • から
  • まで

81 - 106 件 / 106件

新着順 人気順

literature reviewの検索結果81 - 106 件 / 106件

  • 人間は、どこまで遠くを見れるのか。『法治の獣』著者がおくる、傑作宇宙探査SF──『一億年のテレスコープ』 - 基本読書

    一億年のテレスコープ 作者:春暮 康一早川書房Amazonこの『一億年のテレスコープ』は、早川のSFコンテスト(第七回)で優秀賞を受賞、受賞後に刊行されたSF中篇集『法治の獣』は年間ガイドの『SFが読みたい!』で国内篇の一位を獲得と、順調にその実力を証明してきた作家・春暮康一の最新長篇だ。 著者のデビュー作(『オーラリメイカー』)は、天の川銀河に属する文明群が正体不明の星系改造種族に迫る、質実剛健というか手触りの良い中篇であった。続く中篇集の『法治の獣』には、シンプルに驚かされた。ウェルメイドを突き抜け、圧倒的な個性と視点で、地球外生命体SFやファーストコンタクトもののあらたな地平を切り開いていく気概が感じられた。先日刊行されたアンソロジー『地球へのSF』所収の「竜は災いに棲みつく」は、同アンソロジーの中でも突出した広義の気候変動ものだった。 ようするに、著者は新作を読めば読むほど驚くよう

      人間は、どこまで遠くを見れるのか。『法治の獣』著者がおくる、傑作宇宙探査SF──『一億年のテレスコープ』 - 基本読書
    • 青くてエモい「ブルーライト文芸」大ブームの理由

      コンテンツブロックが有効であることを検知しました。 このサイトを利用するには、コンテンツブロック機能(広告ブロック機能を持つ拡張機能等)を無効にしてページを再読み込みしてください。 ✕

        青くてエモい「ブルーライト文芸」大ブームの理由
      • 『無人島のふたり』余命宣告された作家の最期の日々 - HONZ

        訃報はいつだって突然だ。著名人が亡くなると、生放送中のスタジオに報道の人間が原稿をもって駆け込んでくる。速報は一刻も早く放送するのが鉄則だが、そこに記された名前に驚き、思わず足が止まってしまうことがある。訃報にあらかじめ心の準備をしておくことなんてできない。誰かの死に慣れることはこの先もきっとないだろう。 山本文緒さんが亡くなったという報せも突然だった。 2021年10月13日、膵臓がんのため死去。58歳だった。 山本さんは前年、7年ぶりとなる長編小説『自転しながら公転する』を発表したばかりだった。地方のショッピングモールで働く32歳の女性を主人公にした同作はまぎれもない傑作だった。 NHKの『朝イチ』だったと思うが、軽井沢のご自宅で、キツツキが家の外壁に開けた穴をリポーターに見せたりしながらインタビューに答えていたのをおぼえている。その時の楽しそうな表情がとりわけ印象に残っているのは、山

          『無人島のふたり』余命宣告された作家の最期の日々 - HONZ
        • マンガって読むの難しくないですか?|伊藤聡

          基礎能力に欠けている私周囲に話してもあまり賛同を得られないのだが、マンガを読むのは難しいと思う。これまでにもトライしてはみたが、私はうまく読めないままだ。苦手意識もあいまって、これまでに読んだマンガはおそらくトータルで50冊にも満たない。このジャンルを楽しむための基礎的な能力に欠けているため、なかなか気が進まないのである。読むのに時間がかかるし、理解できない部分も残り、没入の感覚をうまく得られない。小さな頃にマンガを読む習慣がなかったことが要因だと思うのだが、どうやって読んでいいのかわからないまま現在に至ったのである。ゆっくり読めばあらすじは理解できるし、内容も一応わかるが、どこかしっくりこない感覚が抜け切らず、マンガを好きな人が感じているであろう楽しさ、興奮の半分も得られていないと思う。マンガって、読むのが難しくないだろうか? 以前、電車の座席で一心不乱にマンガを読む小学生を見かけたとき

            マンガって読むの難しくないですか?|伊藤聡
          • 「少女を埋める」論争が文学史上「奇妙」と言える“3つのワケ”(飯田 一史) @gendai_biz

            日本で「プライヴァシー権」が初めて法的な争点となった三島由紀夫の「宴のあと」事件や、最高裁にまで争いが及んだ柳美里の「石に泳ぐ魚」事件をはじめ、作家が特定の人物をモデルに書いた小説をめぐって無数のトラブルが生じてきた。 そのもっとも新しいケースが文藝春秋社の文芸誌「文學界」2021年9月号に直木賞作家の桜庭一樹が「初めて私小説の形で書いた」(8月6日のTweetより)という「少女を埋める」をめぐって、「朝日新聞」の文芸時評で同作を取り上げた翻訳者の鴻巣友季子と桜庭との間で交わされた論争である。 同作は桜庭を思わせる東京在住の作家・冬子が入院中の父が長くないと母から聞き、7年ぶりに故郷の鳥取に帰るところから始まる物語なのだが――モデル小説の歴史から見ると、今回のトラブルはきわめて奇妙な点がいくつかある。 日本の近現代文学上のモデル小説のトラブルの歴史を扱った『プライヴァシーの誕生』(新曜社)

              「少女を埋める」論争が文学史上「奇妙」と言える“3つのワケ”(飯田 一史) @gendai_biz
            • 「ゲーム」の歴史を変えた「漫画」──『ベルセルク』が与えた「剣の衝撃」とは何だったのか【追悼・三浦建太郎】

              『FF6 ピクセルリマスター』インプレッション。「実際に遊ぶ前と後」で曲の印象がまったく変わる、「仲間を求めて」について 『FF7』、『モンハン』、そして『ダークソウル』、これらはいずれも世界的な大ヒットタイトルであり、現在においてもその存在感は衰える気配はない人気シリーズでもある。つまり、『ベルセルク』がもし存在しなければ、現在のゲームの世界は大きく違ったものになっていたかもしれないのだ。 『ベルセルク』、そして「ドラゴンころし」の登場は漫画シーン以上にゲームシーンに与えた影響が大きいと言ってしまっても過言ではないだろう。 なぜ、『ベルセルク』の「ドラゴンころし」はここまで大きな影響をゲームに与えることが出来たのだろうか。改めて振り返ってみよう。 文/hamatsu 「対モンスター用兵器」としての「ドラゴンころし」 当たり前すぎる話だが、この世に存在するほとんどの剣や刀は「対人用」の兵器

                「ゲーム」の歴史を変えた「漫画」──『ベルセルク』が与えた「剣の衝撃」とは何だったのか【追悼・三浦建太郎】
              • 評論家の切通理作氏、『ウルトラマンの「正義」とは何か』の中で、切通氏自身が大江健三郎批判で書いたことが大江健三郎自身が書いたものと記述され驚愕。→著者の花岡敬太郎氏がTwitterで切通氏に直接弁明・謝罪。自身の誤解を周知へ→出版元の青弓社、本を販売停止・回収の措置を執る

                タイトルが長いけど、最低限これぐらいは必要なTwitterでのやりとりでした。このところ、Twitterを含めネットでよく見る言いっぱなしで釈明謝罪無しorいつの間にか削除という展開にはならず、花岡敬太郎氏の真摯なツイートにも好感が持てました。 (追記)6月22日に出版元の青弓社は回収に入ったとツイートしました。

                  評論家の切通理作氏、『ウルトラマンの「正義」とは何か』の中で、切通氏自身が大江健三郎批判で書いたことが大江健三郎自身が書いたものと記述され驚愕。→著者の花岡敬太郎氏がTwitterで切通氏に直接弁明・謝罪。自身の誤解を周知へ→出版元の青弓社、本を販売停止・回収の措置を執る
                • 『完璧な夏の日』のラヴィ・ティドハーによる、どこか懐かしさを感じる未来の情景を描いたSF長篇──『ロボットの夢の都市』 - 基本読書

                  ロボットの夢の都市 (創元海外SF叢書) 作者:ラヴィ・ティドハー東京創元社Amazonこの『ロボットの夢の都市』は、第二次世界大戦直前に世界各地に現れた異能力者たちの暗躍を陰鬱なトーンで描き出す『完璧な夏の日』や、ヒトラーが失脚しロンドンに移り住んで探偵になった日々を描く歴史改変SFの『黒き微睡みの囚人』で知られるラヴィ・ティドハーによる、未来史長篇だ。近現代史をテーマにしてきた過去の邦訳作と比べると、本作はストレートに人類の未来をSF的に描き出している。 印象的な砂漠と土色で巨大な人型ロボットが描かれた表紙が印象的だが、まさに舞台は砂漠の街(ネオムといい、実在する)であり、そこで暮らす人々とロボットの姿、また数百年前に起こった太陽系を巻き込んだ大戦争とその顛末がじっくりと描きこまれていく。物語の本筋は、とあるロボットが砂漠から掘り起こした”ヤバいブツ”が街の住人を巻き込んだ騒動に発展し

                    『完璧な夏の日』のラヴィ・ティドハーによる、どこか懐かしさを感じる未来の情景を描いたSF長篇──『ロボットの夢の都市』 - 基本読書
                  • 必読書コピペにマジレスしてみる・海外文学編(2)

                    (1)はこちら。anond:20210212080317 キャロル『不思議の国のアリス』好き。ただし、当時の人にしかわからないパロディやジョークが多く、というかこの本を通じてしか残っていないのもあるので、純粋に笑えるかどうかはわからない。とはいえ、わからないなりにナンセンスさは楽しく(「ぽっぺん先生」シリーズにも引き継がれている)、トーベ・ヤンソンなどいろいろな人の挿絵も楽しめるし、こじらせ文学少年・文学少女とも仲良くなれるかもしれない。大学時代の読書サークルは楽しかったなあ。 ドストエフスキー『悪霊』ドストエフスキーの小説は基本的に頭がおかしい。ドストエフスキー自身がギャンブル依存症でユダヤ人嫌いのヤバいやつだし。 登場人物は基本的に自己主張が激しくて感情に溺れやすく、数段落数ページにまたがって独白する。プライドが無駄に高くて空想癖がひどく、思い込みが激しくて人の話を聞いちゃおらず、愛さ

                      必読書コピペにマジレスしてみる・海外文学編(2)
                    • テクノスリラーの傑作『アンドロメダ病原体』の正統続篇にして、ド直球のSFとして拡張してみせた快作──『アンドロメダ病原体-変異-』 - 基本読書

                      アンドロメダ病原体-変異- 上 作者:マイクル クライトン,ダニエル H ウィルソン発売日: 2020/05/26メディア: Kindle版テクノスリラー&SFの傑作マイケル・クライトンの出世作『アンドロメダ病原体』の、別の著者による正統的な続篇がこの『アンドロメダ病原体-変異-』である。 『アンドロメダ病原体』は架空の病原体をめぐる5日間の騒動を描いた小説である。通常の語りとは異なり事態の進行を客観的に記録した報告書のような体裁で、写真や図など具体的な資料が随所に挟み込まれている、特殊なスタイルの小説であった。この『変異』も、そうした小説上のスタイルをきちんと受け継いでいる。 とはいえ、元はマイケル・クライトンの出世作になったことからもわかる通り、科学面でのノンフィクション的な語りなど、氏のスタイルが色濃く出ている作品で、続篇とはいっても難しい面もあるんじゃないかなあ……昔あったコンテン

                        テクノスリラーの傑作『アンドロメダ病原体』の正統続篇にして、ド直球のSFとして拡張してみせた快作──『アンドロメダ病原体-変異-』 - 基本読書
                      • “新進作家”、レジェンド・エリスンに嚙みつく?――ハルキムラカミによる若干のSF批評に就いて - 街道日誌

                        村上春樹の作品についてはさまざまな人がさまざまなことを言っているが、ある種の作品がSFの質を帯びているのは疑い得ない。「SFマガジン」が2006年に行ったオールタイムベスト・アンケートでは、『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』は国内SF長編48位にランクインしている。 さて今回は筆者が偶然発見した村上によるエリスン『死の鳥』書評を紹介する。氏がその本を「読んでいた」ことそのものは、翻訳家・風間賢二氏のエッセイ集『快楽読書倶楽部』(創拓社)によって熱心なSFファンの間ではこれまでも知られていた。ただ、この記事は風間氏が早川書房の編集者であった時代、喫茶店で原稿の受け渡しをした際に村上が『死の鳥』について言及した、と書いてある程度で、村上自身がエリスンについて書いた文章が存在するとは筆者はまったく知らなかった。また、インターネット上にもこの書評に言及しているサイトが見当たらないので

                          “新進作家”、レジェンド・エリスンに嚙みつく?――ハルキムラカミによる若干のSF批評に就いて - 街道日誌
                        • 第166回直木賞受賞予想『同志少女よ、敵を撃て』は『鬼滅の刃』か?『黒牢城』を推しながら直木賞の今後を心配する - QJWeb クイック・ジャパン ウェブ

                          杉江松恋(以下・杉江) 直木賞は初めてが1作、あとは2、3回目でほぼ横並びです。では、お気に入りと受賞予想をお互いに。 マライ・メントライン(以下、マライ) お気に入りも受賞も『黒牢城』です。超大穴として『同志少女よ、敵を撃て』。 杉江 私のお気に入りは『黒牢城』で、受賞予想は『塞王の楯』です。 マライ おおお、また微妙な被りが! 杉江 第11回アガサ・クリスティー賞に輝いた作者のデビュー作です。 マライ 知人の出版関係者の間で、これほど賛否分かれた作品は珍しいです。「『鬼滅の刃』の換骨奪胎っぽさが見事」とする肯定派と「そもそも小説というよりゲームシナリオっぽい」と拒む否定派、いずれも興味深い。まず肯定派ですが、これは「ぽい」じゃなくて「まんま」鬼滅ですね。家族をまるごと鬼に惨殺されて、炭治郎じゃなくて鬼化した禰豆子が復讐に立ち上がる。で、政治イデオロギーからジェンダー問題に焦点をシフトし

                            第166回直木賞受賞予想『同志少女よ、敵を撃て』は『鬼滅の刃』か?『黒牢城』を推しながら直木賞の今後を心配する - QJWeb クイック・ジャパン ウェブ
                          • 「暴君」はなぜ生まれるのか、シェイクスピアが教えてくれること(北村 紗衣,髙山 裕二) @gendai_biz

                            『暴君――シェイクスピアの政治学』(スティーブン・グリーンブラット著、河合祥一郎訳、岩波新書)が刊行された。シェイクスピア研究の大家である著者が、シェイクスピア作品を通して、なぜ暴君は生まれるのか、暴君とはどのような存在なのか、私たちはどうして暴君を求めてしまうのかといった問題に向き合った話題作だ。 現代的な問題意識に満ちた同書を、どのように読むことができるのか。明治大学准教授で政治思想史が専門の髙山裕二氏と、武蔵大学准教授でシェイクスピア研究が専門の北村紗衣氏が論じる(髙山氏の論考は1〜4ページ、北村氏の論考は4〜6ページです)。 「暴君」とは何者か? シェイクスピア研究の大家が解き明かす 髙山裕二 暴君の魅力と専制への階段 史上最強のハンターといえばティラノサウルスである。全長13メートルにも及ぶ最大級の肉食恐竜の名前の由来は、ギリシア語のティラノス(tyrannos)とサウロス(sa

                              「暴君」はなぜ生まれるのか、シェイクスピアが教えてくれること(北村 紗衣,髙山 裕二) @gendai_biz
                            • 本が広げる本の世界──批評から始める秋の読書マップ - 東大新聞オンライン

                              「この世界において、すべては、一巻の書物に帰着するために存在する」。19世紀フランスの詩人ステファヌ・マラルメの言葉だ。この一文でさえその真意を理解しようとすれば万巻のマラルメに関する研究書や論文が必要だろう。だが紙幅と何よりも能力の問題から、ひとまず学生が教科書の偉人の肖像に落書きをするような気ままさで、この言葉を次のように読み変えながら本の世界の広がりについて考えてみたい。「一冊の書物すら、達するためには世界の全てが必要だ」と。 (構成・渡辺明日翔) 本から本へと「渡り読む」ことの意味 外国語の書籍を考えるのが最も分かりやすい。今、目の前に戯曲『リチャード三世』の原書があるとしよう。この15世紀イングランド宮廷の、権謀術数が張り巡らされた政争を題材に採り1世紀後のシェイクスピアが執筆した作品を、21世紀に生きる日本人がそのまま理解できるだろうか? いや、まずは辞書が必要だろう。それも、

                                本が広げる本の世界──批評から始める秋の読書マップ - 東大新聞オンライン
                              • 『人魚姫』は何の話なのか?~『リトル・マーメイド』の原作に戻る - wezzy|ウェジー

                                先月、ディズニーの実写映画版『リトル・マーメイド』のティーザートレイラーが公開されました。『リトル・マーメイド』は1989年にアニメ映画が公開され、低迷気味だったディズニーに大ヒットをもたらしました。ディズニー・ルネサンスと言われる、ディズニーにとっての復活の時代の始まりとなった映画だと言われています。 『リトル・マーメイド』のヒロインである人魚のアリエルを実写版で演じるのは、黒人女性であるハリー・ベイリーです。ベイリーは歌唱力が抜群で、アニメか漫画から出てきたようなちょっと浮世離れした雰囲気もあり、ディズニープリンセスにはぴったりだと思いますが、アニメ版のアリエルは赤毛でどちらかというと白人に近い容姿でした(人魚に人間同様の人種があるのかどうかはあまりよくわかりませんが)。このティーザーは前作では白人だったアリエルが黒人になったということで人種差別的な攻撃を受けることとなりました。本作の

                                  『人魚姫』は何の話なのか?~『リトル・マーメイド』の原作に戻る - wezzy|ウェジー
                                • 市川沙央『ハンチバック』 - Close To The Wall

                                  文學界(2023年5月号)(第128回 文學界新人賞決定発表) 文藝春秋Amazon文學界新人賞と芥川賞受賞作。難病により背骨が曲がっており人工呼吸器を使って生きる主人公が、中絶という「障害者殺し」が日常化したなかにあって、それなら「殺すために妊娠する障害者がいてもよくない?」と計画する。生きることと殺すことの挑発的な問いを投げかけるばかりか、作品の大枠には「当事者性」についての問いも込められている。 作者が作中人物と同様の疾患だということで「読書バリアフリー」についての問題意識を投げかけ、障碍「当事者」の芥川賞受賞としても話題になった。 健常者社会への批判 本作は子供の頃「ミオチュブラー・ミオパチー」という遺伝性筋疾患を発症し、「右肺を押し潰すかたちで極度に湾曲したS字の背骨」を持つ「ハンチバック(せむし)」となり、車椅子を使用し仰臥時には人工呼吸器を装着した語り手の生活と困難が具体的に

                                    市川沙央『ハンチバック』 - Close To The Wall
                                  • 宇宙を支配する帝国の宮邸で繰り広げられる陰謀劇、ポリティカル・サスペンスが堪能できるSF長篇──『帝国という名の記憶』 - 基本読書

                                    帝国という名の記憶 上 (ハヤカワ文庫SF) 作者:アーカディ マーティーン早川書房Amazonこの『帝国という名の記憶』は、アーカディ・マーティーンの長篇デビュー作。デビュー作にも関わらずヒューゴー賞を受賞、その他のSF賞にもバンバンノミネートされた注目の作品だが、その中心的なテーマ・題材になっているのは、宇宙をまたにかける銀河帝国と、その宮廷で繰り広げられる陰謀劇──ポリティカル・サスペンスだ。 舞台になっているのは遠い未来。宇宙は帝国とそれ以外、世界と世界でないものに分かれると言われるほどの巨大帝国テイクスカラアンが主な舞台になっている。銀河帝国、あるいは銀河連邦物といえばSFでもその性質上けっこうな大作が並び、つい先日は銀河連邦・帝国物のみを集めたアンソロジー『銀河連邦SF傑作選 不死身の戦艦』までも邦訳刊行されたぐらいの一大トピックスである。 そうはいっても、銀河帝国があるとはい

                                      宇宙を支配する帝国の宮邸で繰り広げられる陰謀劇、ポリティカル・サスペンスが堪能できるSF長篇──『帝国という名の記憶』 - 基本読書
                                    • お嬢様とメイドさんの間にシスターフッドはあるのか?『おだまり、ローズ』から『荊の城』まで - wezzy|ウェジー

                                      2021.06.12 07:00 お嬢様とメイドさんの間にシスターフッドはあるのか?『おだまり、ローズ』から『荊の城』まで 「シスターフッド」は最近とてもよく使われる言葉です。文字通りには「姉妹であること」を指しますが、フェミニズムの文脈では血縁を越えた女性同士の連帯を表す言葉として使われています。この使い方は意外と古くからあり、オクスフォード英語辞典によると1914年からあるそうです。 シスターフッドという言葉は、とくに知り合いではないような多数の女性が同じ目的とか理想に向かってゆるやかに政治的に連帯する時から、場合によってはレズビアンの恋愛など特定の女性同士のかなり排他的で強い結びつきまで、わりと広い範囲を指してもやっと使われます。「百合」とも重なる概念ですが、百合はレズビアンの恋愛を中心にその周りにある必ずしも恋愛とまでは言えないかもしれないけれどもロマンティックな女性同士の友愛を指

                                        お嬢様とメイドさんの間にシスターフッドはあるのか?『おだまり、ローズ』から『荊の城』まで - wezzy|ウェジー
                                      • 石牟礼道子に相対するには力が要る 『水はみどろの宮』を読む - 関内関外日記

                                        水はみどろの宮 (福音館文庫 物語) 作者:石牟礼 道子 発売日: 2016/03/10 メディア: 単行本 おれは石牟礼道子を偉大な文学者にして「おばあさま」のような存在と思っている。しかし、全部読んだとは言い難い。むしろ、あまり読んでいないといってもいいかもしれない。『苦海浄土』だけで石牟礼道子は語れない。しかし、石牟礼道子は強烈だ。強烈というのも趣のない言葉だが、あまりいい表現が思い浮かばない。そして、その強烈な存在に相対するには力が要る。おれは何作か跳ね飛ばされている。 ようやく、『水はみどろの宮』を読むことができた。おれの中では格闘のようなものである。べつに難解な言葉で綴られているわけでもない、話はちょっと突飛だけれど、べつに人を拒絶するようなものでもない。ただ、その文章の質の高さに圧倒されてしまうのだ。 村の祭りが近づくと、舟着き場から離れて、流れて大きく曲がった河原に、ときど

                                          石牟礼道子に相対するには力が要る 『水はみどろの宮』を読む - 関内関外日記
                                        • フェミニスト批評の道はレオ様主演の『ロミオ+ジュリエット』がきっかけ!? 連載対談 中島京子の「扉をあけたら」 ゲスト:北村紗衣(武蔵大学准教授)|P+D MAGAZINE

                                          HOME > シリーズ > フェミニスト批評の道はレオ様主演の『ロミオ+ジュリエット』がきっかけ!? 連載対談 中島京子の「扉をあけたら」 ゲスト:北村紗衣(武蔵大学准教授) フェミニスト批評の道はレオ様主演の『ロミオ+ジュリエット』がきっかけ!? 連載対談 中島京子の「扉をあけたら」 ゲスト:北村紗衣(武蔵大学准教授) 世の中は、いまだに男目線の考え方で溢れている。その歪みが社会をギクシャクさせているのではないか。でも、「フェミニスト批評」という手法で鮮やかに世の中を斬ってみせる北村紗衣さんとお話ししていると、ちょっぴり楽しい明日の予感がしてくるのです。 2019/12/20 連載対談 中島京子の「扉をあけたら」 第三十八回 批評眼を持つと 人生はもっと面白くなる。 ゲスト  北村紗衣 (武蔵大学准教授) Photograph:Hisaaki Mihara 北村紗衣(左)、中島京子(右)

                                            フェミニスト批評の道はレオ様主演の『ロミオ+ジュリエット』がきっかけ!? 連載対談 中島京子の「扉をあけたら」 ゲスト:北村紗衣(武蔵大学准教授)|P+D MAGAZINE
                                          • マッカーシー遺作、護身術バリツ、財政金融政策 - Cakes連載『新・山形月報!』

                                            ずいぶん間が空いた山形月報ですが、今回は文学好きの間では話題ながらも難物と言われるコーマック・マッカーシー遺作2部作を中心に、ホームズの格闘術と、財政金融政策の話。文学にネタのような真面目な格闘術、さらには経済話といつもながらバラバラですが、さて、どんな話になるでしょうか! ずいぶん間が開いた (一年以上かよ!)。いつもながら、採りあげるつもり満々の本が一冊あって、それをどう料理しようか考えるうちに、ずるずる先送りになってしまうというありがちな話ではあります。 で、今回扱うのは、それではない。 コーマック・マッカーシーの遺作となる2部作『通り過ぎゆく者』『ステラ・マリス』だ。 マッカーシー『通り過ぎゆく者』 コーマック・マッカーシーは、現代にあって、本当の意味での文学を書けた数少ない作家の一人だ。そして、それは文学というものの意義が変わってきた現代では、決して容易なことではない。 村上龍は

                                              マッカーシー遺作、護身術バリツ、財政金融政策 - Cakes連載『新・山形月報!』
                                            • (書評)『暴君 シェイクスピアの政治学』 スティーブン・グリーンブラット〈著〉:朝日新聞デジタル

                                              ","naka5":"<!-- BFF501 PC記事下(中⑤企画)パーツ=1541 -->","naka6":"<!-- BFF486 PC記事下(中⑥デジ編)パーツ=8826 --><!-- /news/esi/ichikiji/c6/default.htm -->","naka6Sp":"<!-- BFF3053 SP記事下(中⑥デジ編)パーツ=8826 -->","adcreative72":"<!-- BFF920 広告枠)ADCREATIVE-72 こんな特集も -->\n<!-- Ad BGN -->\n<!-- dfptag PC誘導枠5行 ★ここから -->\n<div class=\"p_infeed_list_wrapper\" id=\"p_infeed_list1\">\n <div class=\"p_infeed_list\">\n <div class=\"

                                                (書評)『暴君 シェイクスピアの政治学』 スティーブン・グリーンブラット〈著〉:朝日新聞デジタル
                                              • 貧困と暴力、犯罪の過去 人気芸人が書きたかった自伝的小説 | レビュー | Book Bang -ブックバン-

                                                帯も含めて一切そうは書かれていないんだが、これはEXIT兼近大樹の自伝的小説。チャラい売れっ子若手芸人・entranceの石山大樹が「充実を極めてはいるが、喜びと苦しさの反復横跳びを繰り返し、感情が息切れしている」頃、週刊誌に直撃されるところから物語は始まる。 要は、兼近がデビュー前に売春防止法違反で逮捕されたり、窃盗事件に関与したりした過去を、小説という形で振り返っているわけなのだ。 洒落にならない貧困と暴力。そんな家庭環境で培った常識は集団生活との相性が悪くて、気がつくと学校でも浮き上がり、数少ない理解者はいわゆる不良だけ。「お前にピッタリな仕事」として、中学卒業後に無申請のデートクラブ(未成年も所属)の送迎の仕事を紹介されるのも、そのせいで逮捕されるのも自然な流れだった。そして、そこで出会った男に「外出たら一緒にBARやらないか」と誘われ、ハメられて窃盗事件に巻き込まれるのも自然な流

                                                  貧困と暴力、犯罪の過去 人気芸人が書きたかった自伝的小説 | レビュー | Book Bang -ブックバン-
                                                • 伝法作品集からアンソロジーまで日本SF短編夏祭りだ! - 新刊めったくたガイド|WEB本の雑誌

                                                  『オクトローグ 酉島伝法作品集成』 酉島 伝法 早川書房 2,530円(税込) 商品を購入する Amazon HonyaClub HMV&BOOKS honto 『日本SFの臨界点[恋愛篇] 死んだ恋人からの手紙 (ハヤカワ文庫JA)』 伴名 練,れおえん 早川書房 1,100円(税込) 商品を購入する Amazon HonyaClub HMV&BOOKS honto 『日本SFの臨界点[怪奇篇] ちまみれ家族 (ハヤカワ文庫 JA ハ 11-2)』 伴名 練,れおえん 早川書房 1,100円(税込) 商品を購入する Amazon HonyaClub HMV&BOOKS honto 『枝角の冠 第3回ゲンロンSF新人賞受賞作 ゲンロンSF文庫 (株式会社ゲンロン)』 琴柱 遥,大森 望 株式会社ゲンロン 商品を購入する Amazon 『推しの三原則 第3回ゲンロンSF新人賞大森望賞受賞作

                                                    伝法作品集からアンソロジーまで日本SF短編夏祭りだ! - 新刊めったくたガイド|WEB本の雑誌
                                                  • 《中国SF小説『三体』完結》「三部作で一番好きなのは、宇宙の究極の真相が提示された『死神永生』」 李琴峰が語る作品‟最大の弱点”とは | 文春オンライン

                                                    2021年5月25日、SF長編『三体』三部作(早川書房)が、『死神永生(ししんえいせい)』の刊行を以て完結した。作者は中国の作家・劉慈欣で、世界全体での累計発行部数は2900万部を超える大ヒット作だ(2019年時点)。 異星人である「三体人」と地球人との攻防を描いた『三体』について、台湾籍の作家である李琴峰さんが、その魅力を語った。(初出:『文學界』2020年10月号、全2回の2回目。1回目を読む) ◆◆◆ 地球人と三体人の初戦――『黒暗森林』 陽子を11次元展開させることができるなど、地球よりも遥かに高度な技術を有する三体星人は、しかし弱点が全くないわけではない。過酷な環境を生き抜くために、極度の独裁体制、そして効率と生産性を重んじる合理的な生き方を作り上げたため、彼らの世界では意思疎通は思考のレベルで行われている。つまり互いにとって思考が筒抜けなのだ。そのため、三体人の世界では高度な謀

                                                      《中国SF小説『三体』完結》「三部作で一番好きなのは、宇宙の究極の真相が提示された『死神永生』」 李琴峰が語る作品‟最大の弱点”とは | 文春オンライン
                                                    • 詩人の副業、詩の日常――「パターソン」【コラム/スクリーンに詩を見つけたら】 : 映画ニュース - 映画.com

                                                      詩人の副業、詩の日常――「パターソン」【コラム/スクリーンに詩を見つけたら】 2022年5月21日 08:00 「パターソン」Photo by MARY CYBULSKI (C)2016 Inkjet Inc. All Rights Reserved. 古今東西の映画のあちこちに、さまざまに登場する詩のことば。登場人物によってふと暗唱されたり、ラストシーンで印象的に引用されたり……。古典から現代詩まで、映画の場面に密やかに(あるいは大胆に!)息づく詩を見つけると嬉しくなってしまう詩人・大崎清夏が、詩の解説とともに、詩と映画との濃密な関係を紐解いてゆく連載です。 今回のテーマは、ジム・ジャームッシュが監督を務めた「パターソン」です。 「詩人」の肩書きでいろんな仕事をするようになる前から、私もことあるごとに「詩で食べていくのは難しい」という話を耳にしてきた。でも、どこからどこまでを「詩で食べる

                                                        詩人の副業、詩の日常――「パターソン」【コラム/スクリーンに詩を見つけたら】 : 映画ニュース - 映画.com

                                                      新着記事