入社後間もない支局時代、ほとんどの夜を警察署で過ごしていました。いわゆるサツ回りです。大学を出たての小僧が毎晩のように来るのですから、中にはいやな顔をする人もいますし、こちらもはっきり言って苦痛でした。それでもようやく慣れたころ、当時のデスクが突然言いました。 「今、あそこの署はどんな留置人がいるんや」。小僧なりにも質問の意図は「余罪などで再逮捕されそうな容疑者はいるか」だと思いましたが、そもそも刑事さんたちとそれほど深い付き合いをしているわけではありません。デスクにはつい反論してしまいました。 「そんなこと警察が教えてくれますかねえ」。烈火のごとく怒られた後、デスクはこう言いました。「おまえな、誰がどんな容疑で拘留されてるかを隠すような警察があったらそれこそ人権問題や。名前も容疑も公表せずに拘留していいのなら警察はやりたい放題やないか。そんな北朝鮮みたいな国になっていいと思うんか」 古い