『幸菌スプレー』(室井滋著・文春文庫)より。 【2007年幕開けまであと数日という土曜、都内のデパートへ、仕事帰りに寄った。 時期的に混雑しているだとうと思ってはいたが、どのフロアーも想像以上。 プレゼントを買うにも、レストランフロアーのどの店に入るにも、気が遠くなるほど長い列に並ばなくてはならない。 いつもの倍以上の時間がかかったが、何とか買い物や食事を終えると、私とマネージャーのタミちゃんはヤレヤレと溜め息をつき合った。 「こりゃあダメだね。どうしても必要な物だけは買ったから、あとは年が明けて、もっと落ち着いている時に来ようよ」 「大体、この時期の店員さんは臨時に雇われた人が混ざってるから、却ってややっこしい。馴れない人に当たっちゃうと、ラッピングもひどい上に時間もかかっちゃうもの」 そして、こんな会話を交わしながら、レストランフロアーの女子トイレに入ったのだが……。 「おお、何と」…