日韓合意を「当事者」不在の政治解決と指摘する声は多い。では、当事者、つまり元慰安婦たちはいかなる声を持つのか。直接確認したメディアは少ない。彼女たちの立場を考慮する必要はあるにしても、取材者としては直接対面して、その思いを届けることが求められるはずだ。ジャーナリスト・安田浩一氏がソウルに飛んだ。 * * * 深い皺(しわ)の刻まれた腕が伸びる。カン・イルチュルさん(89歳)は私の手のひらを包み込むように握った。 しゃがれ声で私に尋ねる。 「日本から来ましたか?」 たどたどしい日本語だった。 私が頷くと、節くれ立った指にぎゅっと力が入る。 真冬の午後の穏やかな陽が、オンドルの効いた部屋の中に差し込んでいた。テレビはバラエティ番組を映している。恐る恐る慰安婦問題の「日韓合意」について尋ねた。 イルチュルさんは表情をほとんど変えなかった。握りしめた私の手を自分のほうに引き寄せ、まるで子どもをあや
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