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ブックマーク / someru.blog74.fc2.com (8)

  • Hang Reviewers High / リアル鬼ごっこ

    「リアル鬼ごっこ」という小説の評価は全くひどくて、それは知っていた。いわく、物語の筋が陳腐であり、かつ展開が矛盾したものであったり突飛であったりして、とても読むに耐えないのだという。こんなものが何万部も売れて、映画化まで決まるのはおかしいという。Amazonのレビューにはそういう罵詈雑言を書き連ねたレビューがどんどん掲載されている。それによると、そもそも文章が書けておらず、このを罵倒するレビューを書いている者の方がよっぽど豊かな日語能力があるのだという。 僕がただ不思議なのは、そんなにひどいならば、なぜ何万部も売れたのだろうかということだった。Amazonレビューの意見では、小説読者の質が下がっているから、こんなものが売れるのだということだった。実につまらない意見で、そんな老人の繰り言のようなことを書いていて楽しいのだろうかと思う(もちろん彼らは楽しいのである)。そういう意見は単に書

    setofuumi
    setofuumi 2009/04/05
  • Hang Reviewers High / 暗闇の中で子供―The Childish Darkness

    舞城王太郎の小説「好き好き大好き超愛してる」では、冒頭からストレートな表現で愛について語られる。以下のような具合である。 愛は祈りだ。僕は祈る。僕の好きな人たちに皆そろって幸せになってほしい。それぞれの願いを叶えてほしい。温かい場所で、あるいは涼しい場所で、とにかく心地よい場所で、それぞれの好きな人たちに囲まれて楽しく暮らしてほしい。最大の幸福が空から皆に降り注ぐといい。僕は世界中の全ての人たちが好きだ。 舞城王太郎はここで明らかに読者に対し素朴で力強いアプローチを試そうとしているが、しかし表現の強さによってむしろ読者が見逃してしまいがちになるのは、ここから必ずしも恋愛小説が開始されるわけではなく、これが実に小説についての小説であるということだ。それは二段目以降へ読み進めればすぐに分かることだ。 祈りも願いも希望も、全てこれからについてこういうことが起こってほしいとおもうことであって、つま

    setofuumi
    setofuumi 2009/03/15
    過去と未来と物語について。
  • Hang Reviewers High / ゼロ年代の想像力

    夏風邪をひいた。ひどい熱と腹痛と下痢で、何というかもう、最悪だ。ここ数日、自宅でうずくまって「痛い」とか「熱い」ばかり言っている。起きている間ずっと腹が痛く、しかも晩になると必ず熱が上がり、変な汗がどばっと出たり、急に寒くなってガタガタ震えだしたりする。とにかく仕事にならないので弱った。「SMスナイパー」のウェブサイト「WEBスナイパー」にて、書評を執筆させていただくという名誉な仕事を承ったのだが、おかげで進んでいない。とても申し訳ない。でも取りあえず宇野常寛「ゼロ年代の想像力」の書評はアップしていただいた。このは連載時の内容に大きく加筆されており、加筆の中でも時代にとって非常に重要と思われる問題提起を行っているためこのブログで取り扱う必要を感じていた。書評をご依頼いただいたことから、字数の指定がなかったのでブログに書こうと思ったことを全部組み込もうとして調子に乗って書いたらずいぶんと長

    setofuumi
    setofuumi 2008/11/25
  • Hang Reviewers High / ファウスト Vol.7 (2008 SUMMER)

    ここ最近、このブログはメタ批評的にありすぎて、それは僕自身気に入っていない傾向だったのだけれど、仕事のせいもあって、またいろいろ考えるところがあって、意図的にそっちに傾倒していた。しかしあれこれと書評なんかを書いて(まだ上梓されていないけど)だいたい一区切りがついたので、ようやく作品論に戻っていくことができる。ところが、そういうものをどんどん書いているうちに、今度は作品を享受する時間が取れなくなっている。これはゆゆしき問題だ。「崖の上のポニョ」も見ていないというのはおかしなことではないか。そうかとしているうちに「ファウスト」の新号がついに出てしまい、これはもう間違いなく読まねばならないのだけれど、雑誌なのに1240ページもあるのだ。読み切れない。中にも書かれているけど、これはもはや凶器である。鈍器である。読み切れないから、もう、ここにまず書いてしまう。このブログで第一に大切なのはスピードと

    setofuumi
    setofuumi 2008/08/11
  • Hang Reviewers High / 愛のひだりがわ

    ここ十日ほど体調を大きく崩して、久々に熱を出した。毎年楽しみにしている代々木公園のタイフェスティバルにも行けなかったし、仕事もずいぶん遅れてしまった。昨日ようやく体調が戻ってきて締め切りに遅れながらコラムを1つ書き上げられたので、今日はここを更新できるし、ほかの仕事をすることだってできるはずだ。 体調を崩した理由はいろいろあるが、一番大きな理由はを読むのに熱中しすぎたことだと思う。どうやら僕は小説を読むことができるようになってきたので、信じられなくて毎日ハイペースで読んでしまったのだ。 実際のところ、僕は10年以上の間、まともに小説を読むことができなくなっていたのだが、今回たまたま筒井康隆の「愛のひだりがわ」を読んで、もう一度小説を読み始めることができた。このはなぜだか家にあった。買った覚えがない。うちには買った覚えがないがずいぶんあって、そういうは誰かから借りているのを忘れている

    setofuumi
    setofuumi 2007/05/25
    一行の力
  • Hang Reviewers High / ゲーム的リアリズムの誕生~動物化するポストモダン2

    東浩紀「ゲーム的リアリズムの誕生~動物化するポストモダン2」は、とても親切なであり、まずはそれに感心した。 前作となる「動物化するポストモダン」に限らず、これまで東浩紀の著作のやり方は、主張を固めるための検証作業がともすれば大雑把であるし、また、さほどに関連性が深いとは言えない事例を強引に繋ぎ合わせて一つの流れを意識させようとするものがあった。僕はこのやり方を批判するものではない。むしろ、あざやかに全体の論旨を生み出していくダイナミックさに感銘を受ける。 しかしもちろん、このような書き方は批評の言語としては今の日で例の少ないものだから、読者は彼のやり方に違和感を感じるかもしれない。だが彼がなぜこれを選んでいるかということは、現在に至るまでの東浩紀の批評活動のルーツがすべて収められた「郵便的不安たち#」を読めば明確に分かるはずだ。ここでは簡単に触れるまでにしたいが、要するに彼の動機にはポ

  • Hang Reviewers High / ユリイカ2007年4月号

    「ユリイカ」の最新号で巻末のコラムを書かせていただきました。特集は「米澤穂信 ポスト・セカイ系のささやかな冒険」で、それは以下のような内容です。 特集*米澤穂信 ポスト・セカイ系のささやかな冒険 【受け継がれる魂】 ミステリという方舟の向かう先 「第四の波」を待ちながら / 米澤穂信+笠井潔 【書き下ろし短篇】 失礼、お見苦しいところを / 米澤穂信 【米澤穂信の〈世界=地図〉】 距離と祈り、あるいは世界の多重化に関する覚え書き / 斎藤環 零度のミステリと等身大の世界 We cannot escape. / 佐藤俊樹 砂漠通信 / 巽昌章 【米澤穂信という〈事件〉】 彼らは考えるだけではない / 松浦正人 米澤穂信のできるまで / 桂島浩輔 互恵関係と依存関係 〈小市民〉シリーズについて / 古谷利裕 エモーショナル・レスキューの憂 「仕事」をめぐる冒険として 『犬はどこだ』 を読む 

    setofuumi
    setofuumi 2007/04/12
    なんどかよむ
  • Hang Reviewers High

    環ROY「BREAK BOY」 環ROYの新しいアルバム「BREAK BOY」は実直で律儀なアルバムだ。環ROYはここで、彼のような才能に溢れたアーティストであれば全く無視してもいい事柄について綿密に語っている。 おそらく、彼がヒップホップという狭いフィールドを飛び出して、外部に立つ覚悟を持っていることは、誰もが認るところだろう。だから彼は、トラックにおいてもリリックにおいても、その筋のリスナーやミュージシャンが認める「いわゆるヒップホップ」の音楽性から離れて、縦横無尽にラップすることができる。ところが、このアルバムには、一聴すると「いわゆるヒップホップ」のように聞こえる歌詞があるだろう。しかしそのように聞こえてしまう余地こそが、このアルバムが立ち向かった困難さを示している。 環ROYはこのアルバムの中で、何度も繰り返して、音楽に、ヒップホップに、両義的な評価を与えていく。「J-RAP」の

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