25年前、僕は二十代の若者で、仕事に追われる日々を送っていた。誇張抜きに実家と職場を往復するだけの毎日。自宅の近くに幼稚園バスが送迎にやってくる場所があって、僕は毎朝、バスを待つ親子と目を合わさないようにして通り過ぎていた。ある日、バスを待つ親子のなかに男の子と一緒にいるマユミちゃんの姿を見つけた。彼女は幼馴染で、小学校最後の二年間は同じクラスだった。草野球やドッジボールも一緒にやった仲のいい友達のひとりだ。男の子は彼女の子供らしい。1985年、小学六年の夏、僕は彼女と幻の湖をさがす旅に出た。僕らが暮らす町は山と海に囲まれていて、あの山の向こうに誰も知らない湖がある、というマユミちゃんの言葉を信じて、僕と彼女とその他二人(誰だか忘れた)はお菓子と水筒を入れたリュックサックを背負って湖を目指した。マユミちゃんは小さい頃からいつも僕より前を歩こうとしていた。僕はそれが気に入らなくて、いつも彼女