浪曲師の玉川奈々福さんが、この7月で芸能生活30年目に入る。曲師が弾く三味線に合わせて歯切れのいい啖呵(たんか)と節(ふし)を繰り出し、観客をぐいぐいと物語の世界に引き込む実力者。豊富なアイデアで挑戦を続けるトップランナーから現在の取り組みや、懐かしい話をうかがった。(聞き手・構成 時事ドットコム編集部 冨田政裕) 6月下旬の2日間、東京・銀座の観世能楽堂で『奈々福、独演。浪花節で三十年 記念の会』を開催した。歌舞伎の演目を浪曲化した『研辰の討たれ』や、民話を題材にしたユニークな『物くさ太郎』などの自作を披露。戦後歌謡史に詳しい徳光和夫さんをゲストに招いて歌謡浪曲の大御所について聞き出すなど、研究熱心な奈々福さんらしい企画で観客を楽しませた。 ―30年の節目に向けて考えていたことは。 一つは、能楽堂で記念の会をやるということでした。そしてもう一つは、新しい勉強会です。年齢も重ねてきて、私は