(承前) 今年は早いもので米原万里さんの歿後十年に当たっていた。 小生は『ロシアは今日も荒れ模様』(1998)、『旅行者の朝食』(2002)など、彼女のロシアもの面白エッセイを一通り読んではいたものの、TVのコメンテーターとしての彼女の自信たっぷりな物腰と毒舌、エッセイに頻出する下ネタ、それに守秘義務があるはずの同時通訳体験から多くのネタを引き出す態度には、なんというか、ちょっと困惑気味だった。要するに苦手なタイプのひとだったと思う。 ところが彼女が少女時代のプラハ留学体験に根ざしたノンフィクション『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』(2001)や、スターリン時代の市民生活に取材した初めての小説『オリガ・モリソヴナの反語法』(2002)を上梓するに至って、「これは凄い書き手かもしれない」と思い始めていた。 そうした矢先、2006年に彼女の訃報に接して愕然としたのを昨日のように憶えている。紆余曲
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