ある子供 作者: トーマスベルンハルト,今井敦出版社/メーカー: 松籟社発売日: 2016/05/20メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (5件) を見るガイドブック『東欧の想像力』でも近刊予告がされていた「自伝」五部作の第五作が本書『ある子供』、82年作。ベルンハルトといえば『消去』を買ったはいいもののずうっと放置してしまっているまま、この自伝的作品を読むことになったけれど、オーストリアへの痛罵などで知られるその過激さはここではそうとうなりを潜めており、八歳程度と思われる子供時代を回想する自伝的小説としてかなり素直に読むことができる作品となっている。 ここに見られるのは、父親が母を捨ててしまったため、母の子への愛がその憎悪に阻まれ、「自然に発露するということがなかった」、という親子関係の微妙な懸隔だ。もめ事ばかり起こす息子に怒って、母が「お前みたいな子が生まれるなんて