電車内で痴漢に間違われて現行犯逮捕されたサラリーマン。3カ月の身柄拘束、失業、一家の心中未遂。そして2年間の法廷闘争の末に勝ち取った無罪——。ごく普通の家族が冤罪事件に巻き込まれた「非日常」の体験が本になり、5日、出版される。事件は、映画監督の周防正行さんが11年ぶりの新作になる「それでもボクはやってない」を撮るきっかけにもなった。 「お父さんはやってない」(太田出版)。東京都に住む矢田部孝司さん(43)と妻あつ子さん(40)の共著だ。12月5日は2人にとって特別の日だ。00年のこの日に逮捕され、無罪判決はちょうど2年後、02年のこの日に出た。 手記は、「檻(おり)の中」と「外」に隔てられた2人が、否認して怒鳴られ続けた取り調べの様子や、子どもを預けて警察署に接見に通ったときのことなど、それぞれの体験を互いにつづる形で進む。 「どうしたら冤罪を晴らせるのか、裁判に勝つノウハウが書かれた本が