・心の起源―生物学からの挑戦 心とは何かを科学者が哲学的に探究する。面白い。 著者は記憶こそ心の基本であるという。記憶には想起、記銘、保持といった機能が生物学的に備わっている。こうした記憶の照合作用から、時空(位置や時間の堆積)、論理(原因と結果の堆積)、感情(快不快の堆積)という3つの基本的な枠組みがでてくる。そしてさらに統合能力としての統覚が、記憶の中の離散的なもの(時刻、位置、事象、快苦)の中から連続的なもの(時間、空間、因果律、好悪)を見出し、世界の認識に至る。 著者のアプローチは心を物質に還元しない。物質世界、生物世界、心の世界が入れ子構造になっているが、それぞれの世界に独自の法則が働いていると考える。心も遺伝子の乗り物と考えるようなドーキンス的アプローチとは一線を画す。 まず各世界を特異点(開闢)、基本要素、基本原理、自己展開といったキーワードで分析していく。物質世界の自己複製