三井造船社長の田中孝雄は、ドイツ・アウクスブルクで自身の原点に巡り合った。世界最大の舶用ディーゼルエンジンのライセンサー、マンディーゼル&ターボ(MDT)の本社会議室。そこにはディーゼルエンジン生みの親、ルドルフ・ディーゼルが約100年前に描いた直筆図面が飾られている。長らくエンジン畑を歩んだ田中は、思わぬ出会いに興奮を隠せなかった。 国内の舶用ディーゼルエンジン市場で、50%超えのシェアを握る三井造船。デンマークのB&W(MDTの前身)と舶用ディーゼルに関する技術提携を結んで以来、ライセンシーとして90年の歴史を持つ。常務執行役員で機械・システム事業本部長の岡良一は「エンジンは産業機械部門の祖業で、今も屋台骨を支えている」と話す。 2018年春にはエンジンの累計生産量が、1億馬力の大台に到達する見込み。ではなぜ、三井造船が国内競合を圧倒する巨大エンジンメーカーになれたのか。執行役員でエン