ここには、「ママ、ここにカンガルーがいるよ」といった子供と、その言葉を受け止めた親、そしてその親子のやり取りを「詩」として評価する評者を、まとめて一段階下のものと決めつけ、嘲笑する視線がある。 【略】 子供が気づいたそのことを、もちろん、親も気づいた。読売新聞の評者も気づいた。北村薫も、気づいた。ただ、この詩を『VOW』に送った投稿者と、その投稿を受け取った編集者だけが気づかなかった。 さて問題です。ここで前四者が「気づいた」と言われ、後二者が「気づかなかった」と言われている事柄はなんでしょうか? ひらがなの「れ」がカンガルーに似ているということ ひらがなの「れ」がカンガルーに似ているということに気づいた子供の言葉が「詩」になるということ ひらがなの「れ」がカンガルーに似ているということに気づいた子供の言葉が「詩」になるということに気づいた人が子供の言葉をコンテクストから切り出して「れ」と
百万のマルコ (創元推理文庫) 作者: 柳広司出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2007/03/01メディア: 文庫 クリック: 9回この商品を含むブログ (55件) を見る いやあ、堪能させて頂きましたわ。珠玉も珠玉、どの短編も捨てがたい、味わい深い短編集でした。柳広司『百万のマルコ』、やっぱり柳広司は面白いですね。以下、感想抜粋。全文はこちら。 山椒は小粒でもぴりりと辛い。柳広司のポテンシャルの高さがうかがい知れる、非常に錬度の高い掌編集だった。非常に読みやすいし、広くお勧めしたい。 以下、この本を読んだ他のひとの感想。 謎はどれも、それこそ中〜後期の黒後家蜘蛛の会みたいなもんだが、「真を告げるものは」「ナヤンの乱」「一番遠くの景色」あたりが良くできてるかな。 http://d.hatena.ne.jp/firstheaven/20070329/1175190467 マルコが語る
理由(わけ)あって冬に出る (創元推理文庫) 作者: 似鳥鶏出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2007/10/31メディア: 文庫購入: 4人 クリック: 147回この商品を含むブログ (154件) を見る●創元推理文庫からtoi8氏が表紙の作品が刊行 - 平和の温故知新@はてな おかげさまで珍しく書評記事にアクセスが集まっています(書評サイトなのに・笑)。どうもありがとうございます。 ミステリ(特に本格)には伝統芸みたいなところがありますから、若い書き手と読み手の開拓は必要なことですし、押さえるべきところさえ押さえられていれば少しくらいラノベチックなものが出ても何の問題もないでしょう。特に本書の場合、ミステリとしては手堅い出来ですし、それでいて青春小説・キャラクタ小説としての面白さがありますから胸を張ってオススメできます。次作が出るなら「買い」です。 一般にコアなミステリ読みのため
しおんの王(6) (アフタヌーンKC) 作者: 安藤慈朗,かとりまさる出版社/メーカー: 講談社発売日: 2007/10/23メディア: コミック クリック: 10回この商品を含むブログ (48件) を見るこんなに次の巻が待ち遠しいマンガは久しぶり。 なかなか話題にはなりませんが、さりげなくアニメ化されているしおんの王最新刊。将棋とサスペンスという両立させることが難しそうな割に、両立したところでどうなるのかという二本軸でスタートしたマンガなのですが、その二本軸ががっちりと噛み合ってきました。これは良い意味で予想外。 その辺りは、原作が元棋士であり作家としてもベテランのかとりまさる=林葉直子であることが大きいのかなと。棋士と作家を両立している人じゃなければ、この物語は書けないような気がします。ストーリーの運びがしっかりしている上に、一人一人の棋士の生きざまがとにかく格好良いです。それぞれの人
「クダンの話をしましょうか」内山靖二郎(MF文庫J) 夜の駅前広場の片隅で、小さな机を出して占いをしている制服の少女――クダン。 高校一年生の直辰が、最近様子がおかしい幼なじみのつぐみのあとをつけて初めて降りた駅の前で見たのは、おとなしい性格から想像すらできなかった派手な服に着替えたつぐみが、転校生のクダンと口げんかをしている姿だった。直辰は思わずつぐみに声をかけるが、つぐみは自分をヌエと名乗り、直辰のことも知らない人だと突き放す。いったい、彼女に何が起こり始めているのだろうか……? クダンの“予言”を巡って少女たちが織り成す、切なくてやさしい物語。 電撃文庫ではよく見られる切なくてやさしい短編連作。MJ文庫Fでは珍しい? 人の災いを予言できるが、それをその人に伝えるとその人の記憶から消えてしまうという能力を持った少女クダンの物語。 幕間がいい! もちろん本編あっての幕間だけど、たった10
リロ・グラ・シスタ―the little glass sister (カッパ・ノベルス) 作者: 詠坂雄二出版社/メーカー: 光文社発売日: 2007/08メディア: 新書 クリック: 10回この商品を含むブログ (33件) を見る 学園という閉鎖空間を舞台とした探偵推理小説。光文社のメフィスト賞とも称されることのあるKAPPA-ONE登竜門から飛び出してきた詠坂雄二が放つ『リロ・グラ・シスタ』は、浦賀和宏・佐藤友哉・西尾維新・北山猛邦といった作家を輩出していたころのメフィスト賞を彷彿とさせる傑作。メフィストを経た20代のミステリ読みに特にお勧め。以下、感想抜粋。全文はこちら。 とにかくこの語り口が魅力的だった。主人公の性質から物語そのものは淡々と進むのだが、そのシニカルでニヒルな口調に思わずにやけてしまい、ぐいぐいと読むことができた。この語り口に加え、学校という閉鎖空間を舞台とした推理探
首無の如き祟るもの (ミステリー・リーグ) 作者: 三津田信三出版社/メーカー: 原書房発売日: 2007/04メディア: 単行本購入: 9人 クリック: 108回この商品を含むブログ (139件) を見る はい、傑作。5つ星です。だって、傑作なんだもん。感想はこちら。い、いかん。書きすぎた。 ミステリにはひたすら事件を複雑にすることでその難易度を上げる作品がある一方で、たったひとつのトリックを仕掛けることで難易度を劇的に高める作品がある。本書は典型的な後者で、作中には様々な謎が散りばめられているが、それらがすべて「あるひとつの事実」によって完全に説明できるという特徴を持っている。 以下、感想リンク。やはり絶賛されている方が多いですね。この作品はほんとうに読みどころが多くて、また斬新な着眼点でもって感想を書いている方も多かったので、秋山の感想にはないものを、補足するように引用させていただき
螢坂 作者: 北森鴻出版社/メーカー: 講談社発売日: 2004/09/22メディア: 単行本 クリック: 4回この商品を含むブログ (33件) を見る 2004年9月購入。3年の放置。美味いビールと粋な肴を出してくれるバー「香菜里屋」で語られる不可思議な出来事を、マスターの工藤が解決する短編シリーズ。恋人を残して戦地に向かった戦場カメラマンが、別れの間際に恋人と見た螢の舞う美しい坂。恋人が螢坂と呼ぶその坂はしかし、十六年ぶりにその地を訪れたカメラマンには再び見つけ出すことはできなかった。螢坂はどこに行ってしまったのか。恋人との美しい思い出、そして別れの際に語られる悲しき真実を描く表題作「螢坂」。ひょんなことから預かることになった猫に関する人情話の裏にあるもうひとつの人情話「猫に恩返し」。宅地開発で立ち退きを迫られた商店街の店主たち。ただ一人頑固に反対していた女店主の店が、十年後の今になっ
もろこし銀侠伝 (ミステリ・フロンティア) 作者: 秋梨惟喬出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2007/08メディア: 単行本 クリック: 3回この商品を含むブログ (24件) を見る 2007年8月購入。1ヶ月の放置。「武侠小説」という、日本ではいまひとつ注目されないジャンルがある。簡単に言うと中国における通俗時代活劇小説で、読んで字のごとく「武」――格闘バトル要素と「侠」――信義や義侠心を重んずる行動理念を前面に押し出した作風が特徴だ。日本で言うと山田風太郎の諸作品や吉川英治『鳴門秘帖』、最近の作品では西尾維新の戯言シリーズにおけるバトル要素などが似通ったテイストを持っている。あるいは少年ジャンプに代表されるような少年漫画のバトルものにも酷似している。では実際の武侠小説はいかなるものか、という点についてはそれこそ金庸の『秘曲 笑傲江湖』や『天龍八部』など全作品や古龍の『多情剣客無
首吊少女亭 (ふしぎ文学館) 作者: 北原尚彦出版社/メーカー: 出版芸術社発売日: 2007/08メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (9件) を見る 面白かったー。ああ、こういう作品はすごい好きです。とてもいい読書をしてしまいました。感想はこちら。 収録作のいずれも素晴らしいが、特に気に入ったのは「血脈」「新人審査」「貯金箱」「凶刃」「活人画」「遺棄船」「愛書家倶楽部」「首吊少女亭」……って、もうほとんどすべてが気に入った。この中からさらに選ばんとするならジェイコブス『猿の手』と肩を並べうる「貯金箱」と、マリー・セレスト号の謎を解き明かす「遺棄船」と、古書への愛が伝わってくる「愛書家倶楽部」の3編だろう。 以下、感想リンク……を作ろうとしましたが、1件しか見つかりませんでした。この世紀の傑作がどうしてこんなにも読まれていないのでしょうか! 知るひとぞ知るタイプの作
「つまらない理由」をいくら列挙しても「面白い」という評価は否定できないに関連して言い足りなかったこととかを。 数少ない私のじまんというかささやかな矜持というか。少なくとも商業作品として出回っている漫画や小説*1について、「読むんじゃなかった」と後悔したことは一度もありません。 もともと本選びにあまり冒険するタイプではないのであまり変なのは避けてこれたというのもありますし、本を一冊読んで「つまらなかった」という否定的感想しか抱けない、その程度の読みしかできないのはとても恥ずかしいことだという自戒*2もあります。 もちろん、「面白さの分からない作品」に出会うことはよくあります。サリンジャーさんのご本の楽しみ方がよく分からなかったときはけっこう悩みましたし、音楽・絵画など「物語」以外のジャンルになるとさらに「分かる範囲」が狭くなります私の場合。 でも、そういうものに触れたとき「読む価値のないつま
淋しいのはお前だけじゃな 作者: 枡野浩一,オオキトモユキ出版社/メーカー: 晶文社発売日: 2003/12/01メディア: 単行本 クリック: 9回この商品を含むブログ (29件) を見る タイトルが実に素晴らしい。 最高に気に入った一説を引用させていただきたい。 「恋してるからって急に いい人になっちゃ駄目だよ 物書きでしょう?」 慟哭。 感想リンク:柊ちほさん
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