福島県浅川町の畜産農家で肉牛の放射性セシウム汚染が発覚し、政府は原子力災害対策特別措置法に基づく県全域での肉牛出荷停止の検討を始めた。福島第1原発事故以来、風評被害に苦しんできた県内約4000戸の畜産農家は、一層苦悩を深めている。【野倉恵、川上晃弘、井上大作】 浅川町の農家、岡部喜市郎さん(63)は7ヘクタールの田んぼで米を作り、肉牛約50頭を飼っている。同町で数軒しかない肉牛農家の一つから問題が起きた。「稲わらと聞けば普通はコメを連想する。コメまでダメになったら福島の農業は壊滅だ」と危機感を持つ。 岡部さんは「1カ月の餌代だけで1頭あたり1万5000円かかる。出荷再開後に値は付くのだろうか。国や県は農家への生活保障を本気で考えてほしい」と訴える。 JAグループ福島肉牛振興協議会の湯浅治副会長は「今回の件は計り知れない打撃」と話す。 浅川町の畜産農家に稲わらを納入したのは、同県白河市の稲作