現代語の「ない」という語には、形容詞と助動詞があります。 この両者は、意味が似ており活用形もほぼ同じなのですが、もともとは別の言葉であったと考えられています。形容詞「ない」は文語の「なし」が語源ですが、助動詞「ない」の語源の方は幾つかの説があって、まだ定説を見ていません。ただ、文語には「ない」と「ず」という二つの助動詞があり(「ない」は東日本方言という説が有力です。)、そのうち伝統的な「ず」が使われなくなり、今では専ら「ない」が使われるようになったわけです。 ということで、形容詞「ない」と助動詞「ない」とでは使用法に違いがあるのです。 一般に、「~なく、……」のように、活用語の連用形でいったん止め、あとにつなげる用法を「(連用)中止法」と言います。 例「酒を【飲み】、女を抱く。」(動詞の場合)、「亭主【元気で】留守がいい。」(形容動詞の場合)、「頭が【悪く】性格もよくない。」(形容詞の場合