ラエリアン・ムーブメントが昨年十二月にクローン人間誕生を発表したとき、私が興味を持ったのは、クローン人間誕生が本当かどうかではなく(どうせいつかは必ず誕生するのだし)、むしろマスコミ報道の方だった。生命テクノロジー関係のニュースの通例に洩れず、識者によるクローン反対、警告、忌避などが紹介されるというパターンである。 新聞やテレビでだけ報道に接した人々は、専門家のほとんどがヒトクローニングに反対しており、怪しげな宗教団体だけがこの道徳に逆らっている、という印象を抱くのではなかろうか。しかし現実には、クローン人間作りに賛成する倫理学者や科学者は決して少数派ではない。マスメディアがなぜ賛成論を黙殺するのかということは意義深い研究テーマになるだろうが、書籍のレベルでは、賛成論はすでにさかんに展開されている。その中でも、賛否両論をバランスよく紹介し、反対論に本当に根拠があるかを丹念に問い直している