二次体 上の整数環 を考えたときに,その代数的整数に対して「素因数分解の一意性は必ずしも保証されない」 という問題は,代数的整数論のイントロダクションとして重要なトピックだと思います。具体的には, のときには, という数が2通りに素因数分解されてしまうことが,例として紹介されます。 ミステリーだったら「伏線」のようなもので,この伏線が「イデアル」という手法によって鮮やかに解決していくのを,読者は期待するでしょう。 当然,大抵の本では,このことをきちんと説明します。ところが,これがなかなか難しい。一番知りたかった結果に至るまでの準備が長過ぎて,そこまで至るまでに力尽きてしまったりします。 そこで,本記事では「 が2通りに分解されてしまう問題」を解決するためだけに,イデアルの解説をしたいと思います。あくまで,この問題を解決するためなので,余計な例は出さず,一直線に向かっていきます。 とはいえ,