人類が衰退し、マシンが君臨する未来から、「現代」をふりかえった秀作。 SFがすばらしいのは、現代を「ふりかえって」眺めることができるから。未来や別次元から、「いま」を理解しなおすのだ。もちろんテクノロジーが混ざるから、バイアスはかかる。だが、拡張された鏡ごしに、「いま」を観察できるのだ。「人生は後ろ向きにしか理解できないが、前向きにしか生きられない」と喝破したのはキルケゴールだが、人生だけじゃなく、「いま」も然り。 アンドロイドがヒトに語る6つの物語。それぞれの物語が、「いま」で言う「SF短編」となっている。元ネタ探しが楽しい―――シーマン、BBS、連作小説、攻殻機動隊、老人Z、ラブプラス……「ラブプラス」は世に出ていなかったから、"予言"的中度をふり返ってもなかなかのもの。500頁超の大作だが、ミステリ要素の強い展開とあまりの面白さにイッキ読みしてしまう。 なぜマシンが支配しているのか?