2016年の2月19日、84歳でウンベルト・エーコが亡くなったが、この偉大な作家にして哲学者が残した「遺言」に、イタリアで波紋が広がっている。 エーコが教鞭をとっていたボローニャ大学院人文研究科において、故人を追悼する学会について打ち合わせが開かれようとしていた。 だがその1時間前に、エーコの一番弟子であったパトリツィア・ヴィオリは未亡人のレナーテに呼び出され、こう告げられたのだ。 「ウンベルトが私と子供たちに宛てた遺言状には、『今後10年間は自分に関する学会を開催しないように』と書かれています」 この言葉に、故人の同僚や愛弟子たちは茫然としたが、やがて笑い出してしまった。というのも、たしかに生前のエーコは「遺言状に『学会拒否』について書く」と語っていたのだ。 同僚や弟子たちは、これをいつもの冗談だと思って聞き流していたのである。 もちろん、未亡人から遺言状の内容を聞かされた同僚たちは、「
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