この不況で問われているのは、日本人の働き方だと思う。日本企業が戦後の一時期、成功を収めた一つの原因は、農村共同体が解体したあと、その行動様式を会社に持ち込んでコミュニティを再構築したことにある。その労働倫理の原型は明治期より古く、江戸時代に市場経済が農村に浸透してきたころに始まるといわれる。速水融氏は、これを産業革命(industrial revolution)をもじって勤勉革命(industrious revolution)とよんだ。 イギリスの産業革命では、市場経済によって農村が工業化され、資本集約的な産業が発達したのに対して、日本では同じころ逆に市場が農村に取り込まれ、品質の高い農産物をつくる労働集約的な農業が発達した。二毛作や棚田のように限られた農地で最大限に収量を上げる技術が発達し、長時間労働が日常化した。そのエネルギーになったのは、農村の中で時間と空間を共有し、家族や同胞のた