今夏、人間国宝に認定された。 父の故六世野村万蔵に続いて親子二代の人間国宝。いまの狂言界では、大蔵流の茂山千作、兄で和泉流の野村萬、そして万作と3人になった。 認定の業績欄に『軽妙洒脱(しゃだつ)で品格のある舞台…』とある。 「光栄なことだと思っています」。一言一言かみしめるように語った後、遠くを見つめるような目をした。 「父の芸は晩年、軽妙洒脱といわれたものでした。私は父の芸質を一生懸命学んだつもりでしたので、父と同じ芸風と評されたことが非常にうれしかったですねえ」 昭和40年代には“違いのわかる男”のコピーでおなじみのコーヒーのテレビCMに出演。一躍有名になり、狂言という古典芸能を茶の間に広く知らしめた。大曲「釣狐」を生涯に20回以上も演じ、“狐役者”と異名をとる。知性と深い情感が同居する芸風は、狂言の新しい地平を拓(ひら)いた。 東京郊外の閑静な住宅地。自宅の稽古(けいこ)場は特有の