◇文学を読むはずの人へ 「35歳問題」やショッピングモール、村上春樹など、現代を読み解くキーワードをちりばめたSF作品。批評家の東浩紀さん(38)が初の長編小説『クォンタム・ファミリーズ』(新潮社・2100円)を刊行した。 「文学を読むはずの人たちが、面白いものが見つからないという理由で遠ざかっているのではないか。そういう人たちに向けて、小説を書いたつもりです」 小学生のころから、日本を代表するSF作家・小松左京の熱心な読者だったという。「先に評論で名前が知られるようになってしまいましたが、僕は元々がSF読者。その上に現代思想が乗っている」と語った。 物語は07年夏、元作家で大学教授の男に、30年後の未来からメールが届く。複数の時代を巡ってストーリーが進行するパラレルワールド。主人公の家族4人が、それぞれの並行世界で違った歴史を持って現れる。 タイトルは訳すと「量子家族」になる。「彼らは核