マンガを読むとき、読者はコマという単位の中でテキストと静止画とを何度も往復し、詩的な構造を創り上げていく。 たとえば、『映像研には手を出すな!』第二巻 p142、五徳を囲んでカップ麺を食いながら、金森が読者モデルとしての水崎を売り込む策謀を語る一コマを見てみよう。 原作では、焚き火の前で金森が二つの吹きだしを用いて言う。「せっかく注目を浴びる「明るい場所」を獲得したんです。」「可能な限り煽って効果を最大限引き出す。」この二つの吹きだしにはさまれて、向こうでは金森が団扇で火をダパダパと「煽って」おり、手前では五徳の火がボウボウバチバチと燃えている。読者であるわたしはまず、激しく燃える火から「明るい場所」を、ダパダパから「可能な限り煽って」を、ボウボウバチバチから「最大限」の効果を読み取ろうとする。火を煽ることを、可能性を煽ることの比喩として読む。 もちろんこれは、コマを右から左に眺めながら、