顔そり 大阪市都島区・寺沢容子(主婦・64歳) 我が家の狭い部屋にも春の柔らかな日差しが差し込み、テレビや家具などにほこりの付いているのが目に付きだし、日ごろのお掃除の手抜きを反省させられる有り様です。 明日。お天気だったら学生時代の放課後のお掃除ではないが、半日費やし頑張ってみようかなあと思い、ふと隣に座っている91歳になる母の顔を斜め横からすかして眺めていると、母が「産毛が生えてまゆ毛がそりづらくて、まゆをかくことができない」と申すのです。 そこで私は、初めて母の顔そりをやるはめになりました。幸い危なくないカミソリを調達したばかりだったので挑戦してみることにしました。 間近でじっくりと見る母の顔は、90年もの人生を歩んだその道程の長さが、シワの深さにあらわれているのに気付かされました。そう思うとシワもいとしく、つきたてのお餅を持ち上げたように、垂れ下がった皮膚を持ち上げたり下げたり、ま