砂州の寒村だった横浜村は,修好通商条約の開港場に選ばれ,生糸貿易によって発展し,現在日本最大の政令指定都市と なっている.1858年の条約では,開港場は東海道の「神奈川」であった.しかし幕府は,長崎出島のような閉ざされた居留地を意図して,「横浜開港場」を突貫工事で建設し,1859年7月1日の開港日に間に合せた.そして翌年,横浜村の住民を移住させ堀川を開削して,水路で囲まれた「関内」を作り上げた.島崎藤村の小説「夜明け前」では,高額な生糸相場のうわさを耳にした木曽の生糸商人一行が,百里離れた開港直後の横浜を訪れている.そして同行した医師の眼を通して,横浜の様子を詳しく伝えている.また開港前後に来日した外国人写真家は,当時の貴重な歴史写真を残している.本報では,小説「夜明け前」と外国人写真家の歴史写真と共に「横浜開港場」を辿ってみる.