真後ろに陣取るボクシングファンが声をからしていた。序盤、坂田が攻勢の場面を作ると、一団の声援がひと際弾んだ。 「レベルが違うよ!」 「キャリアが違うんだ!」 彼らの脳裏には坂田健史の歩みが刻まれていた。1999年の全日本フライ級新人王獲得。2001年の日本タイトル奪取と通算5度の防衛。'04年から始まる世界挑戦と3度の失敗。そして4度目の挑戦にして悲願のベルト戴冠。決して才能に恵まれたわけではない。ひたすら愚直に、不器用に、そして正当にキャリアを重ね、亀田兄弟が協栄ジムに移籍した際は、名もなき「世界ランカー」として引き立て役を務めさせられた。それでもなお、愚痴をひとつもこぼさなかった坂田が、新人王にも日本タイトルにも背を向け、飛び級で桧舞台に立ったボクサーに負けていいはずがない。彼らの叫びにも近い声援には、そんなやるせない感情が込められていたのだ。 しかし、試合開始当初こそ威勢の良かった坂
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