第144回直木賞受賞作は木内昇(のぼり)の「漂砂のうたう」、道尾秀介の「月と蟹」の2作に決まった。選考委員の宮部みゆきさんによる選評の概要は以下の通り。 選考に2時間半かかりましたが、木内さんの「漂砂のうたう」、道尾さんの「月と蟹」の2作品に決まったことをご報告します。最初に選考委員全員で投票し、犬飼六岐さん(「蛻(もぬけ)」)と荻原浩さん(「砂の王国」)、貴志祐介さん(「悪の教典」)の作品が相対的に点が低かったことで、今回は授賞を見送ろうと。その時点で、2作に評価が集中していました。 まず犬飼さんの作品については、着想が面白い。江戸の町屋、というものを資料も少ないであろう中、うまくテーマとして見つけて小説にしたことについては評価があったが、ミステリー仕立てにしたことで人物のはつらつさに欠けるとか、ミステリーにしたことで町屋と外の江戸の世界とは断ち切られているとはいえ、聞こえてくる音がなく