「法廷通訳人」をご存じだろうか。裁判で、日本語が通じない外国人の被告と裁判官らの間で交わされる言葉を中立・公正な立場で通訳する仕事だ。わずかな誤訳が量刑はもちろん、無罪か有罪かの判断にも影響しうる。重い責任を負い、適正な裁判手続きに欠かせない。だが法廷通訳人の登録者は減少しており、数の不足は明らかだ。負担に見合っていないとして待遇改善を求める声も上がっている。 私が法廷通訳に関心を持ったきっかけは、2018年に前任地の静岡県で傍聴した、ベトナム人の元技能実習生が不法滞在の罪で起訴された事件だ。通訳人が通訳する日本語の意味が理解しにくい場面が度々あり、裁判官も首をかしげているように見えた。心配になって弁護人や検察官に目を向けたが、気にする様子はない。公判は淡々と進み、あっという間に結審した。