福島第1原発事故で失われたふるさとの価値について思いを巡らす除本理史さん=福島県双葉町の東日本大震災・原子力災害伝承館で2023年3月16日、渡部直樹撮影 住民がその言葉を口にする度に重みが増すように感じてきた。「悔しい……」。2011年3月の東京電力福島第1原発事故直後、避難を余儀なくされた住民は皆、喪失感をあらわにした。福島を100回以上訪れ、聞き取り調査を続けた大阪公立大教授の除本理史(よけもと・まさふみ)さん(51)は、ある問いが頭から離れなかった。「ふるさとの価値とは何か」と。 公害の被害実態と賠償、地域の回復を研究テーマに東京経済大で教壇に立っていた。11年4月からは、公害研究で実績のある大阪市立大(現大阪公立大)に籍を移し、熊本・水俣や大阪の公害を研究する計画だった。 大阪への引っ越し準備をしていた時、東日本大震災が発生。福島第1原発の原子炉建屋で水素爆発が相次ぎ、放射性物質