「顔がなくなる」「死を覚悟した」―。7月15日に渡島管内松前町の自宅すぐそばにある家庭菜園で農作業をしていた82歳の夫と78歳の妻が1頭のヒグマに頭部や腕をかじられ、重傷を負った。昨年7月には隣接する同管内福島町でも、高齢の女性が畑作業中に別のヒグマに襲われて死亡しており、人とクマの生活圏が重なっていることが浮き彫りになった。近年相次ぐクマによる人身被害は防げないのか。9月下旬に病院を退院して自宅に戻った夫妻から当時の状況を聞き、クマ対策の課題を探った。(木古内支局 大庭イサク) 2人が襲われたのは45年前から大事に活用してきた家庭菜園だった。周囲は山に囲まれ、広さは約50平方メートル。それほど広くはないが、2人がジャガイモやトマト、スイカ、カボチャなどを育てるには十分な広さだ。タヌキやキツネなどの害獣対策として、四方は高さ1・2メートルほどの防風ネットで囲み、シカの侵入を防ぐためにロープ