「火垂るの墓」が多くの人の心に残っていることはありがたい。テレビで繰り返し放映され、見てもらえる機会が多かったことに感謝している。ストーリーが分かっていても何度も見てもらえるのは、(主人公の)兄妹2人が生き抜こうとする姿を丁寧に描いたからではないか。 野坂昭如さんの原作にひかれたのは、2人がいかに死に向かっていったかを閉じた世界の中で描くという「心中もの」の構造があったこと。アニメなら新しい求心力で描けるのではないかという表現上の野心が強かった。 私自身が岡山で空襲を経験したこともある。小学4年生だった私は6年生の姉と2人だけで逃げ回った。逃げた方向に焼夷(しょうい)弾が落ちてきて、火の海の中で立ち往生した。「火垂るの墓」の2人より、もっと危険な目に遭った。自分の経験を含め、事実を事実としてきちんと描いた。 悲惨さだけを描いたつもりはない。子どもは楽しみや自由を見つける天才。戦争中も声を立