太平洋戦争において、日本軍特有の「戦い方」が敗因となったと思われる事例は数多く存在するといわれる。軍事史専門家である藤井非三四氏の著書『太平洋戦争史に学ぶ 日本人の戦い方』(集英社新書)では、同氏がそうした日本軍の「戦い方」を詳細に分析、現代社会にも通じる日本社会との構造的共通点を指摘する。太平洋戦争を通じて明らかになった日本人の組織ならではの特徴とはいったいなんだろうか。ここでは、同書の一部を抜粋し、戦時下における日本の向こう見ずな動員戦略について紹介する。(全2回の2回目/前編を読む) ◆◆◆ 日本の動員戦略 日本陸海軍は各国軍と同様、動員戦略を採っていた。平時から戦時所要の兵力を維持し続けることは財政的にも不可能だから、平時は教育主体の部隊を維持し、そこから生まれる予備兵力の厚みに期待する。平時から維持して教育訓練にあたる平時編制の常設師団を動員によって戦時編制の野戦師団とする。平時