しかし、「すし」も今ではグローバル化して「sushi」として世界中の人々に好まれるようになった。日本でも「固苦しいことを言わずに自由に楽しめばいいじゃん!」という考えが主流になり「新種」や「珍種」の鮨が続々と誕生し、鮨屋そのものの営業形態も大きく変わってきた。そんな時代の流れに逆らうように、私の好みは、昔ながらの流儀を大切にしている小さな店だ。酒もビールの小瓶と菊正宗のぬる燗があれば何の文句もない。つまみも妙に凝った焼き物や煮物など必要ない。肝心の鮨が不味くなる。鮨屋は鮨を食う場所であり、他の魚料理を食いたければ鮨屋へ行く必要はない。ネタも昔からあるもので十分であり新奇なものは好まない。 これは私にとってそれが美味いか不味いかの問題ではなく、チョコレートマティーニやパイナップルマティーニをマティーニとは認められないのと同じことだ。私は江戸前の鮨というのは最早、完成された食い物だと思っている