■現代を照射し続ける批評 いわゆる激辛時事批評。タブー知らずに縦横無尽。切れ味抜群の言葉に「そうそう」と共感するやいなや、返す刀で読み手自身もぶった切られてイタタ! 論旨は明快、文章は軽快、ユーモアもたっぷり。なんか懐かしいなぁ、こういうタッチ…と読み進むうちに思考回路が開かれて、なぜ、いま、読み手の自分が「この手の文章」を懐かしく感じてしまうのか-にまで理解が及んで絶句させられる。面白くて恐ろしいサスペンスのような批評集だ。 目次には、考察の対象になった言葉が並ぶ。「育ててくれてありがとう」「ニッポンには夢の力が必要だ」「全米が泣いた」「国益を損なうことになる」「なるほど。わかりやすいです」「逆にこちらが励まされました」…。 こういう言葉が連呼され、物事が自動的に反復されていることに疑問を抱けなくなった状態を、著者は「紋切型社会」と呼ぶ。言葉が本来持っていたはずの跳躍力が弱まっているのだ