「チベットでまた焼身自殺」――そのように淡々と伝えられるニュースは,ともすればわたしたちから現実感を奪ってしまう。ニュース画面に並ぶ数字の群れ。それは犠牲者たちを「数字」として処理させてしまう。だが,彼らにもそれぞれの人生があり,思いがあり,家族があった。それでも彼らは焼身した。本書『太陽をとりもどすために』は,そのひとりひとりに寄り添いながら,チベットにおける焼身抗議の全貌を明らかにしようとした本である。中原一博『太陽をとりもどすために――チベットの焼身抗議』(NGOルンタ・プロジェクト,2013年) 著者の中原氏は,チベット語を解し,チベット解放運動に長年携わってきた筋金入りのチベットサポータである。ゆえに本書もまたそのような立場から書かれたもので,基本的にチベット解放運動に寄り添っている(そもそも発行元のNGOが解放運動に携わる組織である)。また,ソースとなっているのも,多くがRFA