昭和14(1939)年、独ソ不可侵条約の締結に衝撃を受けた平沼騏一郎内閣は、総辞職する。そのとき出した声明は、当時の流行語になった。「欧州情勢は複雑怪奇」。国際オリンピック委員会(IOC)に対しても、同じ言葉を投げかけたい。 ▼とにかく、12日にスイスのローザンヌで開かれた理事会で、レスリングを2020年の夏季五輪中核競技から外す決定を下した理由が、わからない。人類最古のスポーツといわれるレスリングは、古代オリンピックの花形競技だった。 ▼近代オリンピックでも、第2回のパリ大会をのぞいて、常に実施されてきた伝統のスポーツだ。問題点とされる「判定のわかりにくさ」と「世界的普及度」についても、同じく除外候補だったテコンドーと近代五種に比べて、遜色があるとは思えない。 ▼気になるのは、15人の理事会メンバーの身元だ。レスリング関係者は見当たらない。ロンドン五輪でレスリングの金メダルを獲得した日本