女の気持ち：夫婦の秋 北海道新十津川町・澤田孝江（主婦・７４歳） | 毎日新聞

「コクワを採りに行こう」と夫を誘った。実は、盆の墓参りの時、コクワの木を見つけていたのだ。 勇んで木に近づくと、あれ、何もない。「先に採られたか……」。胸が高鳴り、私はもう童心に帰っていた。夫は「せっかく来たのだから」と木に登り始めた。 「ほら、そこそこ。右手の下にいっぱいあるよ」と口だけ元気な私。夫は何も言わず、夢中で指先ほどの実を紙袋の中にパラパラと入れる。 コクワって一個一個が別々になっていると思っていた。それが、いくつも身を寄せ合ってなっているのを初めて知った。