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【産経抄】傘かしげ 6月30日(1/2ページ)
作家の故山口瞳さんは、折り畳みの傘を持たなかった。突然の雨で周りの人が濡(ぬ)れているとき、鞄(... 作家の故山口瞳さんは、折り畳みの傘を持たなかった。突然の雨で周りの人が濡(ぬ)れているとき、鞄(かばん)から折り畳み傘を出して、思わず得意顔になる。「そのときの品のない自慢げな顔がみっともない」というのだ。息子の正介さんが、山口さんのコラム集の解説に書いていた。 ▼愛用の折り畳み傘を取り出すたびに、この文章を思い出して、後ろめたい気持ちになっていた。ただ最近、使わないときはしまっておける「効用」の大きさに気づいた。電車のなかで、腕や鞄に傘をぶら下げ、スマートフォンに夢中になっている人をよく見かける。傘の先の滴が他人にかかっても気づかない。 ▼まして、地下街の通路で傘を横向きに持って闊歩(かっぽ)するなど、論外である。折り畳み傘なら、少なくともこんな迷惑をかけることがない。傘をめぐるトラブルが、目立つ時期である。先月末も東京都新宿区で、帰宅途中の会社員男性が男に刃物で刺され、重傷を負う事件が
2016/06/30 リンク