田村 賢司 日経ビジネス主任編集委員 日経レストラン、日経ビジネス、日経ベンチャー、日経ネットトレーディングなどの編集部を経て2002年から日経ビジネス編集委員。税・財政、年金、企業財務、企業会計、マクロ経済などが専門分野。 この著者の記事を見る
来年から運用が始まるマイナンバー制度をめぐり、準備に関わっていた厚生労働省職員の汚職事件が発覚した。筆者はある病院長の紹介により今回逮捕された容疑者と今年4月に会食する機会があった。初対面での印象は強烈で、とても違和感を覚えた。 事件を受けて、省内で幹部らに話を聞く限り、容疑者に対して以前から同じように違和感を覚えていた人は少なくなかった。そうでありながら、なぜ暴走を許してしまったのか。容疑が事実とすれば、罪を犯した本人が何より責められるべきなのは間違いないが、制御しきれなかった組織の責任も重い。 「とにかく頭がいいし、先日の講演では、個人情報保護などの難しい話を3時間ノンストップで続けて、全く聴衆を飽きさせない、相当な話術の持ち主です。カミソリのような切れ味ですが、親しみやすいところも多く、会ってみたら楽しいですよ」。 以前の取材先である病院の院長から、講演会を通じて知り合った厚労官僚を
組織ぐるみで不正な会計操作をしていた実態が明るみに出て、歴代社長3人が辞任する事態に至った東芝の会計問題──。 日本を代表する“名門企業”で発覚した不祥事からどのような教訓を導き出し、同様の不祥事の防止につなげるべきなのか。危機管理の専門家で、企業不祥事研究の第一人者である樋口晴彦・警察大学校警察政策研究センター教授に聞いた。同教授のインタビューを2回にわたって紹介する。 (聞き手は中野目 純一) 今回の東芝の会計不祥事の内容についてどう見ていらっしゃいますか。 樋口:個別の手口を分析すると、はっきり申し上げて、よく聞く話ばかりです。ですから、東芝だけがやっているのではなくて、程度の差こそあっても、こうしたことをやっている会社はざらにあります。東芝は(売上高の)規模が大きいために金額が大きくなりましたけれど、売上高に占める比率から見ると、東芝並みの比率で不正をしている企業も、それほど少なく
どう考えても腑に落ちない。独フォルクスワーゲン(VW)が、米国内で販売していたディーゼル乗用車で、排ガスに関する試験をクリアするために、違法なソフトウエアを使っていたとされる事件のことだ。 違法なソフトウエアを搭載していたとされているのはVWが米国で販売した2009~2015年型の「ゴルフ」「ジェッタ」「ビートル」と2014~2015年型の「パサート」、そして傘下の独アウディが販売した2009~2015年型の「A3」のディーゼル仕様車の合計約48万2000台だ。米環境保護局(EPA)の発表によれば、これらの車種に搭載されているエンジンECU(電子制御ユニット)のソフトウエアには“スイッチ”(EPAの呼び方)が組み込まれており、このスイッチが「ステアリングの位置」「車速」「吸気圧」などからEPAの排ガス試験中であることを検知すると、ECUが「試験用」の制御ソフトウエアを走らせて、排ガスに含ま
9月7日、東芝の決算発表である。3月決算の東芝の有価証券報告書の提出期限は本来6月末だから、実に2カ月以上も遅れたことになる。もちろんシニア記者は現場に向かった。 だが正直に申すと、今回、突撃レポートは見送るつもりじゃった。東芝の不正会計問題については、6月の「株主総会」、7月の「社長辞任会見」に続き、1週間前の「決算再延期会見」にも突撃している。 東芝の不正会計は日本の株式市場の透明性に泥を塗る、実にけしからん問題だが、いい年をして同じ会社に何度も何度も突撃していたのでは、何とかの一つ覚えと、若い者に笑われる。 幸い、この日の決算発表では大きなサプライズはないはずだった。そこで、ここはぐっと我慢して、シニア記者のシニアたるゆえんを世間にお見せしようと算段だったのじゃ。 「株主およびステークホルダーの皆様に多大なるご迷惑をおかけしたことを、おわび申し上げます」 室町正志社長の謝罪で始まった
佐藤卓(さとう・たく) グラフィックデザイナー 1979年東京藝術大学デザイン科卒業、1981年同大学院修了、電通を経て、1984年佐藤卓デザイン事務所設立。「ニッカ・ピュアモルト」の商品開発から始まり、「ロッテ キシリトールガム」「明治おいしい牛乳」などの商品デザイン、「PLEATS PLEASE ISSEY MIYAKE」のグラフィックデザイン、「金沢21世紀美術館」「国立科学博物館」「全国高校野球選手権大会」等のシンボルマークを手掛ける。 また、NHK Eテレ「にほんごであそぼ」アートディレクター、「デザインあ」総合指導、21_21 DESIGN SIGHTディレクターを務めるなど 多岐に渡って活動。著書、展覧会も多数。(写真:鈴木愛子、以下同) 川島:日本のデザインの世界って、グラフィックデザイン、プロダクトデザイン、空間デザイン、そして建築デザインと、それぞれの分野に専門デザイナ
みなさん、はじめまして。関西学院大学ビジネススクールの副研究科長をしております玉田俊平太(たまだ・しゅんぺいた)と申します。「変な名前だな」と思われたあなた、その通りです。おかげで小さい頃は一方的にからかわれ、強い子になることができました。 「ずいぶん古風な名前だな」とお感じになった方、確かに時代劇の主人公、月形半平太とは一文字違いです。「イノベーション論の泰斗であるシュムペーターと同じ名前なんて、きっとペンネームに違いない」と思ったあなた、違います。本名です。父が一橋大学で経済学を学び、長男が生まれたときに勢い余って付けてしまった名前です。 お陰で海外の学者に自己紹介すると「祖先はオーストリア人か?」、「タマダとシュムペーター、どっちが名字だぃ?」と話が10分は転がり、名前を覚えてもらえるので、今では父に感謝しています。 バイオブームに乗っかって後悔 ただ、米ハーバード大学に留学していた
シンプルで機能的、無駄を削ぎ落とすことで現れる美しさ…。無印良品の商品にはぶれがない。流行に左右されず、常にスタンダードな“MUJIらしい”商品を生み出し続けられるのはなぜだろうか。その理由は、商品開発のプロセスのみにとどまらず、さらにその上流の企業経営の仕組みに隠されている。 無印良品の母体、良品計画という企業の方向性を決めるうえで大きな役割を担っているのが、「アドバイザリーボード」の存在だ。アドバイザリーボードとは、ブランドコンセプトを維持するために外部のデザイナーで構成された組織。現在はグラフィックデザイナーの原研哉氏、クリエーティブディレクターの小池一子氏、プロダクトデザイナーの深澤直人氏、インテリアデザイナーの杉本貴志氏の4人で構成している。毎月1回、ボードメンバー4人と金井政明・会長以下の幹部社員が一堂に会する「アドバイザリーボードミーティング」を開く。 ここは、具体的に何らか
河野 祥平 日経ビジネス編集記者 2006年日本経済新聞社入社。社会部、消費産業部などで警視庁、ネット業界などを担当。直近では企業報道部でビール・清涼飲料業界を取材。2015年4月から日経ビジネス。 この著者の記事を見る
米アップル社の創設者、故スティーブ・ジョブズ氏が日本の「禅(ZEN)」に影響を受け、禅の精神がアップル製品の源泉となった話は有名だ。 欧米や日本における禅ブームが一段落した今、新たな仏教のジャンルに世界の人々の注目が集まりつつある。それは「原始仏教」だ。 原始仏教は今から2500年前、古代インドにおける釈迦の「出家」に始まる。この原始仏教の成り立ち、考えを学ぶことが、ビジネスをする上でも効果的だと唱える研究者がいる。 「世界で最も長く続いた組織が仏教であり、そこから学び取れることはとても多い」――。 原始仏教研究の第一人者である花園大学・佐々木閑教授がそのひとり。佐々木教授は、NHKのEテレで放送している人気番組「100分de名著」で「ブッダ最期のことば」などの解説者としても知られる。同番組のテキストは“ベストセラー”になっており、原始仏教についての関心の高さがうかがえる。 原始仏教と日本
これまで一貫して、人と機械が各々得意な能力を組み合わせて豊かな生産、生活が実現するという楽観論を展開してまいりました。膨大なデータに基づくランキング、判断や、超高速に力ずくですべての可能性を計算できる能力では、機械はほぼヒトを凌駕してしまうことでしょう。しかし、前回記事で触れたフレーム問題や、将棋で王手をかけられたら回避すべしといった基本原理の理解不足の類により、人がまだまだ優位な点が向こう数十年は残ると思います。 将来、量子コンピュータなどの仕組み(アーキテクチャ)が飛躍的に進化するまでは、人間が未知の事態等に世界知識・教養を駆使して対応し、「適当に」計算を打ち切って妥当な判断を下す能力によって、高速に大量のデータ、パターンと照合するという力技では解決でき難い問題を解く役割が続く、ということであります。 最適化の計算や、チェスや将棋の如き知的、論理的判断、シミュレーションのような課題です
2015年1月、池上彰さんは教鞭をとる東京工業大学の図書館にて「新聞の読み方」を講義しました。池上さんは、毎朝必ず、全ての全国紙と日本経済新聞を読み比べているそうです。ついでにいうと小学生新聞も。 「元日の新聞を読み比べると、面白いくらい新聞がわかる」 池上さんはそう力説します。今回は、朝日、読売、毎日、日経、産経、東京の6紙の元日朝刊を読み比べながら、こんなことを学生たちと考えてみました。 あえて「紙の新聞」を各紙読み比べるのはなぜ? 特ダネってどう生まれるの? 正月企画ががらりと違うのはなぜ? 新聞によって入っている広告が違う理由は? 例の朝日新聞問題、池上さんの率直な意見は? で、結局のところ、新聞って必要? 学生はもちろん、新年度を迎えたばかりのビジネスパーソンにもばっちり役に立つはず。池上さんの「新聞のススメ」はじまり! 池上 彰 (いけがみ・あきら)さん ジャーナリスト。195
経営権を巡る父娘の対立が激しさを増す大塚家具。長女の大塚久美子社長が3月27日の株主総会に向けて会社側提案として出した取締役候補者名簿に、父である大塚勝久会長が強く反発。自ら独自案を株主提案として提出し、委任状争奪戦を繰り広げている。 一見、親子の喧嘩に見える騒動だが、事の本質は株式公開企業の経営体制、つまりコーポレートガバナンスのあり方を巡る考え方の違いにあるという。渦中の大塚久美子社長が単独インタビューに応じ、すべてを語った。 会長と社長の対立が遂に委任状争奪戦に発展してしまいました。 久美子社長:私を選ぶか、会長を選ぶかといった選択のように報道されていますが、決してそうではありません。株式公開企業として「あるべき経営」「あるべきガバナンス体制」を実現させようとする(私を含めた)取締役会の多数意見に対して、個人商店流の経営がしたい勝久会長が抵抗しているという構図なのです。 経営戦略の違
「パーキンソンの法則」という言葉は、どこかでお聞きになった方も多いかもしれません。本書は10章からなり、今回はその中から3つに絞ってご紹介します。手に入れた日本語版もやや古いので、訳や解釈をより今の状況に合わせるために原本を取り寄せている間に時間がかかってしまい、いつもより掲載が遅れたことをお詫びします(したがってこのコラムでの日本語訳は、日本語版の日本語訳と若干異なっている場合がありますのでご了承ください)。 この本が出たのが1957年ですから、なんと58年前、約2世代前になります。「そんな古い本、役に立つの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、「法則」は何年たっても「法則」です。1000年たったら「重力」が変わるわけではないですし、たとえば「九九」がいつ発明(?)されたのか知りませんが、現在も、そして将来も、すべての計算の基本になることは間違いないでしょう。 アメリカでも、慶
ホンダが社長交代を発表した。現在の伊東孝紳社長には、社長就任前の、まだ本田技術研究所の社長だった時代にインタビューしたことがある。田中角栄元首相は「コンピューター付きブルドーザー」と呼ばれていたそうだが、伊東社長も同様に、まさに馬力も知性も備えた人という印象をその時に受けた。 リーマン・ショックの直後に就任し、緊急避難的な対策で会社を再建し、ようやく攻勢に転じたところで見舞われた「フィットハイブリッド」やタカタのエアバッグの大規模リコール。軽自動車スポーツカー「S660」や、スーパースポーツカーの新型「NSX」、「F1」復帰など、自らが撒いた種を刈り取るところまで社長交代はないかなと思っていたが、予想は外れた。外れついでにいえば、次期社長も意外な人物だった。私は別の人物を予想していたが、その人は次の次になるのだろうか。 さて、今回取り上げるのはホンダが2月13日に発売した新型ミニバン「ジェ
今回は、人工知能の進化をめぐる楽観論と悲観論について取り上げてみたいと思います。 技術的な楽観が、人類にとっての悲観となることがあります。人工知能が人間の知能を追い越して進化するという設定で映画「ターミネーター」では未来世界で機械が人類を抹殺しようとしていました。また、最近の映画「トランセンデンス」では、アップロードされた人格が機械やITインフラを駆使して人間を支配しようとする。つまり、技術的には楽観的になることで人類にとって悲観的な未来を描く向きもあります。天才物理学者のホーキング博士まで、最近、そんな発言をしています。 もっとも、実際に人工知能の研究開発や応用で苦労してきて、現場の最前線の技術を具体的に知悉している人はどちらかというと正反対の見方、すなわち、人間の素晴らしい能力はそんなに簡単には超えられないから心配には及ばない、と考えてきた人が多いように思います。 ところが、20年近い
皆さん、こんにちは。月に1度の読書コラムです。今回のテーマはドイツです。なぜ今回、ドイツを取り上げるのかというと、日本とドイツは似たところが多く、多くのことが学べるような気がするからです。 戦後、日本とドイツは両国とも、がれきの山から立ち上がりました。しかしよく考えてみると、どちらがより過酷な状況だったかと言われれば、筆者はドイツの方が大変だったと思います。 日本は米国に占領されただけですが、ドイツは旧ソ連、米国、フランス、連合王国の4カ国に占領されました。さらに、東ドイツと西ドイツ、2つに分断されました。 それを統一して東ドイツを吸収したのは20年ほど前ですが、巨額の統一コストを負担しなければなりませんでした。がれきの山から再出発したのは同じだったけれど、ドイツの方がはるかに状況が厳しかったのです。 それにもかかわらず、ドイツの経済は近年絶好調ですし、ユーロという重荷を抱えてはいますが、
年が明け、「宗教の暴力」が続いている。1月7日以降にフランス・パリで起きた連続テロは、イスラム教の預言者ムハンマドを風刺した新聞社への復讐が発端だった。さらに、過激派組織「イスラム国」による日本人人質事件では、1人が殺害されたと伝えられ、今なお、こう着状態が続いている。 宗教と暴力――。一見、相反する関係に思える両者だが、その実密接に関係していることを、今われわれは改めて思い知らされている。 2001年9月11日の米国同時多発テロ、それを発端としたアフガニスタン侵攻、そしてイラク戦争へと発展していった戦乱の記憶が蘇る。「テロとの戦い」は、宗教戦争(=キリスト教とイスラム教の戦い)と位置づけられもした。 国家と宗教の争いは根深く、解決の難しい問題だ。いつの時代も世界各地で、両者はせめぎ合ってきた。 歴史は、「宗教の暴力」と「国家による宗教弾圧」の繰り返しであると言っても過言ではない。格差や貧
本連載は、一昨年まで米国のビジネススクールで助教授を務めていた筆者が、世界の経営学研究の知見を紹介していきます。 さて、筆者は一昨年に帰国以来、様々な業種の方々と交流する機会を得てきました。そしてこの経験を通じて、多くのビジネスパーソンが自社の戦略に悩み、それを考えるヒントを得るために「経営戦略」の考え方・フレームワークを勉強されていることも知りました。 米ハーバード大学の著名経営学者マイケル・ポーター教授の『競争の戦略』のような経営書を読んで勉強される方は多いですし、専門のコンサルタント・大学教授のセミナーに参加される方もいます。「戦略が優れている」と言われる他業界の企業を分析し、自社に取り込もうとする方もいます。「戦略」に対するビジネスパーソンの関心は、ますます高まっているようです。 しかし同時に筆者が驚いたのは、戦略がうまくいかないそもそもの「根本的な理由」について、ビジネスパーソン
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