インド北部の農業地帯に2エーカーの農地を持つシャイフル・ラフマンさんは、生まれてこの方ずっと、水の供給源がどんどん地下深くに沈んでいくのを見てきた。 「子供の頃は、水は地下15フィート(5メートル)のところにあった」とラーマンさん。「55歳になった今、雨がずっと少なくなり、帯水層の水面は地下90フィートまで下がった」 2年前、ラーマンさんは10万ルピー(2080ドル)を投じて深さ220フィートの井戸を掘った。先代から引き継いだ深さ70フィートの井戸が枯れてしまったからだ。 米の一大生産地であるパンジャブ州では、水を大量に使う稲作が地元の水資源を食いつぶしてきたために、多くの農家が同じくらい深い井戸を掘っている。 農家や都市部の水不足は、インド全域でかねて懸念されてきたが、今年は弱いモンスーンのせいで一段と深刻なものとなっている。モンスーンの到来が遅かったうえに、降雨量が少ないのだ。
Creative Commons, Some Rights Reserved, Photo by dchurbuck いまや100兆円規模といわれ、「水」戦争とも呼ばれる世界の水市場事情、この市場で大きなシェアを占め、“水メジャー”と呼ばれるのがフランスのヴィヴェンディ(Vivendi)やスエズ(Suez)、ドイツのRWEといったヨーロッパのグローバル企業だ。そしてその水市場にあのIBMが本格参戦するらしい… 果たして水市場の争奪戦は世界の人々と環境にとっていいことなのか、悪いことなのか。IBMの戦略から探ってみよう。 水メジャーというのは国や地方自治体と契約し、上下水道事業を行う巨大企業のこと、日本では水道は都道府県の水道局が供給しているわけだが、実際の事業は民間委託している場合も多い。水メジャーはこの民間委託を大きな規模で国際的に行っているわけだ。 IBMが参入しようとしているのはこの
サウジアラビアの国王は今年、一束の稲を受け取る儀式を行った。サウジの海外農業投資のためのアブドラ国王イニシアティブと呼ばれる計画の下で生産された最初の収穫物の一部である。 稲はエチオピアで栽培されたものだ。ここではサウジの投資家連合が1億ドルを投じ、エチオピア政府からリースされた土地で小麦や大麦、米を栽培しようとしている。 投資家は最初の数年間は税金を免除され、すべての収穫物をサウジに輸出することができる。 その一方で、国連世界食糧計画(WFP)は2007~11年の間に、飢餓と栄養失調の恐れがあると見られる460万人のエチオピア人に23万トンの食糧援助を提供するために、サウジの投資家たちとほぼ同額(1億1600万ドル)の資金を投じる。 サウジの計画は、世界の貧困国で猛烈な勢いで広がりを見せつつ、同時に物議を醸している流れの一例だ。資本を輸出する一方で食糧を輸入する国々は、資本を必要
三峡ダム*の完成によりできたダム湖の周辺では、長江本流と支流の水質汚染が急速に悪化し、大きな試練に直面している。 *長江中流に建設された世界最大級のダム。環境への大規模な影響が計画段階から指摘されていた。 3月下旬、本誌(財経)記者は湖北省宜昌市から船で長江をさかのぼった。長江と主な支流の合流点では、気温の上昇とともに「水華」と呼ばれるアオコの異常発生のリスクが高まり、ダム湖沿岸の都市は対策に追われていた。 ダムの完成で長江本流の水位が上昇したため、ダム湖に流れ込む支流の一部区間によどみが生じ、水の流速が毎秒1センチメートル以下になっている。 昔から「流水は腐らず」というが、その効果がなくなってしまい、支流のよどみに大量の窒素やリンがたまった。富栄養化した水に日光や気温の一定の条件がそろうと、生態バランスが崩れて藻類などが異常繁殖を起こす。これが「水華」である。 住民の健康に重大な脅威 三
高橋 初めに申し上げておくと、僕はいわゆる中国専門家ではありません。あくまでも農業の専門家、食料の専門家です。多くの中国専門家は中国そのものを研究していますが、私は中国という国を研究しているのではなく、中国で生産されている食料について、農作物を実際に作っている農民について、さらには、どういう農地を使って農業をしているか、どのような生産をしているか――といったことを研究しています。 中国の農業を本格的に研究し始めたのは15年ほど前になりますが、それまでも様々な国の農業を研究してきました。日本はもちろんのこと、アジアや米国、ヨーロッパなどで農民に話を聞き、農業の実態を調査してきました。私の関心事は、日本で消費している食料がどのように作られているか、農民がどのように食料を作っているか、その暮らしぶりはどうなっているか、というところにある。 ―― 中国の農業を研究しようとしたきっかけはどこにあった
3月中旬に起きたマダガスカルの政権転覆の一因は、水問題にあった。それも韓国の水問題である。 韓国の複合企業、大宇は、水不足に悩む韓国国内で食糧供給を増やす難しさを憂慮し、韓国向けの穀物を栽培する目的で、マダガスカルの農地全体の実に半分におよぶ広大な土地をリースする契約を結んだ。 その契約条件(マダガスカルの島民には事実上、何も見返りがなかった)に対する怒りは、前大統領への不支持に火をつけた。新しい大統領が最初に取った行動の1つが、リース契約を破棄することだった。 その3週間前、地球の反対側では、米カリフォルニア州のアーノルド・シュワルツネッガー知事が非常事態を宣言した。知事が州内で給水制限に踏み切る可能性に触れたのは、今回が初めてではない。国連世界水アセスメント計画(WWAP)の最近の報告書は、「地球規模の水危機を回避するには、緊急措置を取る必要があるのは明らかだ」と述べている。
前回連載からお休みが長くなってしまった。このところ筆者も本業が忙しく本連載がお留守になってしまったが、ご容赦願いたい。今回は水ビジネスについて。 あるところにあるが、ないところにはない水資源 日本で暮らしていると、水不足を感じることはない。水道の蛇口をひねれば水が出てくるし、大抵の場合そのまま飲める。だが世界全体では水不足という。拙訳書『クリーンテック革命』でも石油に加えて今後水が貴重な資源になるとされる。 水は地球全体で約14億立方キロメートルある。膨大に感じるが、そのほとんどは海水であり、淡水で人間に利用できる量はその1%に満たない。 100万人当たりの年間の水需要は2000年時点で4000キロ立方メートル(SHI and UNESCO(1999))。1人当たりでは4000立方メートルの水が必要ということだ。 一方1人当たりの水資源量を世界平均にすると8000立方メートルとなり、世界中
「総合商社の事業は幅広いが、インフラ関連は安定的、持続的な収益基盤の一つになりうる」。大前孝雄・三井物産常務執行役員プロジェクト本部長の確信は揺るがない。同社のインフラ関連で、収益規模が大きいのは電力だが、昨今力を入れている分野に「水」がある。 水分野で三井物産はタイとトルコの上水事業、中東での造水発電プラントのIWPP(独立発電事業者)を手掛けるが、この1年で急速に拡大している先がメキシコだ。 2008年7月、筆頭株主である東洋エンジニアリングとともにメキシコのアトラテック社(旧アーステック社)を買収した。ア社は工業廃水処理設備や下水処理設備の設計・建設・操業を得意とする水処理専門のエンジアリング会社。これまでもア社とはメキシコで、石油公社向けの廃水処理や、地方水道局に対する下水処理事業を共同で行ってきており、この買収で一気にメキシコでの基盤確立を狙っている。 電力事業の場合、カン
中国が15日間の春節(旧正月)期間に入った頃、中国の温家宝首相は、スイスの瀟洒なリゾート地、ダボスで世界の実力者たちと懇談していた。 春節も終わりに差しかかった2月8日、温首相は全く趣の異なる場所に現れた。白いきれいな運動靴が目を引く姿で、河南省楊北村の麦畑を視察したのである。 温首相はしゃがみこんで地元の農民たちと話をし、今、河南省を含む華北・華中の7省を襲っている厳しい旱魃を乗り切るための援助を約束した。 この地域で100日間雨が降らなかったことを受け、中国政府は過去50年間で最悪となるこの旱魃に対して、最高レベルとなる「1級旱害警報」を発令。特例の旱魃救済金として新たに3億元(4400万ドル)の追加投入を決定した。 過去50年間で最悪の旱魃、政府も対策に乗り出したが・・・ この資金は、人工降雨ロケット砲弾から、新しい井戸の掘削、給水タンクローリーに至るまで、あらゆる水不足対
前の記事 「通勤用自転車のコンテスト」に優勝した作品 乗る車は性格を表わす:最も多く交通違反切符を切られている車は 次の記事 太陽光を利用、低価格でフィルター交換不要な携帯浄水器、BMW社デザイナーが開発 2009年2月 5日 Brian X. Chen Photo Credit: Watercone 時に、ごく単純な技術が最も優れていることがある。太陽光を利用した浄水器『Watercone』は、その良い例だ。 この浄水器は円錐形をしており、塩分を含んだり汚染されたりした水を浄化して、数時間のうちに淡水を最大で1.7リットルまで生成できる、と同製品のサイトは述べている。[設計者はドイツのStephan Augustin氏。同氏の本業はBMW社のデザイナー] Waterconeの仕組みは次の通りだ。浄化したい水を黒い平皿に入れて、円錐形の蓋をかぶせる。黒い平皿は太陽光を吸収するので、水は加熱
新興国の経済成長を受け、世界の水処理ビジネスが拡大している。仏スエズなど欧米の“水メジャー”は水道水の製造から配管、料金徴収までを手掛ける収益性の高いビジネスモデルを強みに攻勢をかける。この欧米勢に対抗しようと官民がスクラムを組み、12月初めにも“日の丸”連合が立ち上がる。金融危機が実体経済に波及し新興国経済には黄信号もともるが、社会の生命線でもある水処理関連は2025年には100兆円との試算もある成長市場。“和製水メジャー”への挑戦が始まった。 ≪技術は世界一だが…≫ 濾過(ろか)膜メーカーやゼネコン、大手商社を含めた25社程度は12月、経済産業省の後押しも得て、新興国の水ビジネスで大型受注を目指す「海外水循環システム協議会」を発足する。共同事業をやりやすい有限責任事業組合(日本版LLP)の形態で設立。プロジェクトごとに特別目的会社(SPC)を設立し、各社が技術やノウハウを持ち寄
──温暖化問題について、地球や人類が破滅してしまうかのように伝えられているケースによく遭遇します。学校教育などでも、気候変動を取り上げることが増えているようですが、子どもたちが環境問題に関心を持つ一方で、将来に対する不安感を募らせるだけの結果になっていないか心配です。 沖大幹教授(以下敬称略): 温暖化で何が悪いかと言えば、「変化する」ということです。暑くなることが人間にとって悪いかと言えば、必ずしもそうではありません。温暖化後に想定される日本の気温よりも暑い熱帯の国々でも多くの人が健康に暮らしていますし、東京の気温が20世紀の間に約3℃上がった結果、熱中症は増えているかもしれませんが、冬の死亡率は減っているはずです。 人間生活から見たときに大きな問題は、気候が変わると、それに適応していろいろな社会の仕組みを変えなければならないということです。変化に合わせて新たに冷暖房を見直すとか断熱
『MarkeZine』が主催するマーケティング・イベント『MarkeZine Day』『MarkeZine Academy』『MarkeZine プレミアムセミナー』の 最新情報をはじめ、様々なイベント情報をまとめてご紹介します。 MarkeZine Day
水は「新たな原油」:淡水生成プラントの現状は 2008年6月12日 環境 コメント: トラックバック (0) Alexis Madrigal Photo:UN環境プログラム これほどたくさん水があるのに、魚以外は誰も利用できない。 地球上の淡水がどれほど少ないかを小学校で習ったものの、上の図を見ると、私はやはり驚いてしまう。この図は、地球上のすべての水資源の配分を示している。数々の巨大な川をすべて合わせてもこれだけ? 文明の発祥には、地球上のたった0.04%の水しか必要なかったのだ。 淡水が有限な資源だとわかったことで、これを「新たな原油」と呼ぶ人も登場している。2007年10月、『New York Times』紙の『Magazine』セクションに、現在の水環境に対して気候変動が及ぼす影響に関する記事が、「未来は枯渇する」という見出しで掲載された。 この記事の中でJon Gertner氏は
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