宇宙誕生―原初の光を探して [著]マーカス・チャウン[評者]辻篤子(本社論説委員)[掲載]2011年5月22日著者:マーカス・チャウン 出版社:筑摩書房 価格:¥ 1,680 ■空の「化石」、謎解きそしてまた謎 太古の生物の姿を伝えてくれる化石があるように、太古の宇宙の化石もある。 「宇宙背景放射」と呼ばれる、セ氏マイナス270度のかすかな電波である。 ビッグバンから38万年、超高圧超高温の火の玉宇宙が冷え始めたときに解き放たれた光が宇宙の膨張とともに飛び続け、今、電波となって見えているのだ。背景の名の通り、私たちの周りの宇宙空間を満たしている。 本書は、火の玉宇宙の名残の「化石」を追ってきた科学者たちの半世紀余りにわたるドラマを生き生きとつづる。 発見は偶然だった。米国の2人の若い天文学者が1964年、空のあらゆる方向からやってくる奇妙な電波に気づいた。雑音と思い、ハトのフンを犯人と疑