本書の著者はNHKラジオ中国語講座やEテレ「テレビで中国語」の講師をつとめているので、ご存じの方も多いだろう。著者は、近代における日本語と中国語との語彙交流、現代中国語の語彙と文法の研究者としても知られている。つまり「中国語についてはなんでもござれ」だ。その著者の「漢語の謎」についての本がおもしろくないはずがない。明治維新によって、一八六八年を機に西洋文明が日本に流れ込んできた、というのが一般的な理解かもしれない。その時に、西洋のことばを漢語で翻訳した、うんうん知ってるよ。 【写真】この記事の写真を見る いやいや、もう少し複雑で、その複雑さがたまらなくおもしろい、というのが本書だ。与えられている紙幅が限られているので、具体的なことがらについては、本書を読んでいただくしかないのだが、とにかく「そうだったんだ」の連発であることは疑いない。以下、どのような語が採りあげられているかを紹介しながら、